中止、延期、払い戻し、制限、リスク、無観客……もっともっとあります。この春、野球についてお伝えする際のちょっと凹むワード。ラジオパーソナリティの私はあまり深刻に伝えすぎるのは良くないと思い、番組では少しトーンは明るめにと心掛けています。でも、凹む話題の中でも、気持ちの風通し、換気はそれほど悪くないのです。だって、ちょうどいい頃にファイターズから心地いい春風が吹いてくるから。

栗山監督が繰り返し使っていた「ど真剣」という言葉

 2月後半、ファイターズの沖縄キャンプから戻ると地元の雰囲気がずいぶんと変わっていました。新型コロナウイルスです。北海道は早くから感染者が出たことで、2月の終盤には鈴木直道知事が緊急事態宣言。不要不急の外出は控えるようにと、3週間に渡って呼びかけられました。集客目的のあるイベントは次々と中止や無期延期になり、飲食店は閑古鳥が飛びたい放題、特に土日の街中は宣言が解かれた今でもまだまだ閑散とした雰囲気はぬぐえません。私個人も3月のイベントの予定は見事にすべて白紙となりました。平日、レギュラーのラジオ番組への出演を続けています。

 栗山英樹監督と、このオフ初めて話が出来たのはキャンプイン前日、1月31日のことでした。2019年シーズンが終わってから栗山監督はメディアには沈黙していました。例年恒例だった番組にも登場せず、その中には私の担当するラジオ番組HBCラジオ「ファイターズDEナイト!!」も含まれていました。夏場に大きく低迷しチームが5位に終わったことに深く「責任」を感じ、考えることや整理することがいつものオフと比べられないほど山積みであることが想像出来ました。出て話さないことを「無責任」だとする声もファンからあがっていましたが、監督は貫きました。

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 やっとお話が出来たその日、監督は「ど真剣」という言葉を繰り返しました。京セラ創業者の稲盛和夫さんがよく使われる言葉です。沈黙のオフ、監督に一番引っかかった言葉がこの「ど真剣」だったそうです。1日の終わりにその日を振り返る時、自分へ、今日のあなたはそれ以上は頑張れませんでしたか? 1日ど真剣に取り組みましたか?と問う、と。その日をめいっぱい生ききったのかと。

栗山英樹監督 ©文藝春秋

 今回のコロナ騒動で、私に吹いた最初の風がこの言葉を思い出すことでした。世の中のせいにして、出来ることを怠っていないのか。窮屈なのであれば何か工夫は出来ないのか。もっとしなやかにふるまえないのか。ど真剣と呼べる今日だったのか。背筋が伸びるようなまだ少し冷たい風でした。