昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

【追悼】志村けん 1度ドリフを辞めた高卒青年が『バカ殿』を生み、お笑いレジェンドになるまで

2020/03/30

genre : エンタメ, 芸能

 新型コロナウイルスによる重度の肺炎を患い入院中だった志村けんが、3月29日に逝去したことが分かった。

 2月に70歳の誕生日を迎えていた志村けん。「ヒゲダンス」「バカ殿様」「変なおじさん」「アイーン」……様々なキャラクターで多くの世代を笑わせ続けた。高校卒業後、ドリフに入り、1度お笑いを離れた青年はいかに伝説のコメディアンになったのか。(初出:2020/2/20)

◆◆◆

 お笑い界のレジェンドともいうべきコメディアンの志村けんがきょう2月20日、70歳の誕生日を迎えた。志村といえば、数年前にNHKで放送されたコント番組『となりのシムラ』は新鮮だった。何しろ志村がカツラもメイクもせず、素の姿でコントを演じたからだ。同番組中のコントでの、妻や娘から冷たくされるなどといったシチュエーションは、長らく深夜番組の1コーナーとして放送されていたコメディドラマ「志村運送物語」にも通じるが、志村の姿がまったくの素である分、どこか哀愁すら感じられた。本人も、やってみた感想を訊かれ、《どうしても僕は哀愁のほうが好きだから、寂しい役ばっかりになっちゃうんですよ》と答えている(※1)。

 過去の雑誌記事では、《いったんメークをしちゃうとね、不思議に僕は、何でも出来ちゃうんですよ》と語っていた(※2)。著書『志村流』によると、《カツラをつけてメイクして、衣裳を変えれば、タレント志村けんは、もうその役になりきって、キャラクターそのものなんだ》《だから、「キャラ・志村」に変身したときに一層、素のオレでは恥ずかしいことだって、大胆にこなしてしまう》という(※3)。なお、「キャラ・志村」とは、「素の志村」「芸人・志村」と並び、彼のなかにあるという3種類の人格のうちの一つだ。この分類でいくと、『となりのシムラ』で演じたのは「素の志村」と「芸人・志村」の中間といったところだろうか。「芸人・志村」としてコントを演じるなかで、一瞬、シャイな「素の志村」が顔をのぞかせるのが、やはり新鮮であり、おかしかった。

3月29日に逝去したことが分かった志村けんさん(享年70) ©文藝春秋

「あっ!お釣りもらってねぇ……」自販機トラブルとは?

 志村はまた、仕事が終わると共演者と連れ立って朝まで飲み明かす酒豪ぶりでもつとに知られる。最近ではフジテレビ深夜の『志村でナイト』で共演する千鳥の大悟とよく飲んでいて、師弟のような関係を築いている。ただ、肝臓の数値が上がり、ひところとくらべると酒は控えめにしているらしい。《今は家では飲まないようにしてて、ここんところ血糖値も上がってるんで、1日1万歩の散歩してるんですよ》とは、一昨年に脚本家の宮藤官九郎と対談したときの発言だ(※1)。対談では、ある日散歩をしていたときのエピソードとしてこんな話もしていた。