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「日本は普通に人々が歩いている」

 マニラ首都圏の封鎖にともない、住民がコンドミニアム(日本のマンションのような建物)や自宅から出る際、外出許可証の携行が義務付けられるようになった。発行されるのは1家族につき1枚に限定されているため、家族でどこかへ出掛けることはできない。街の飲食店は店内での飲食が禁じられ、テイクアウトのみ。自治体によっては飲酒も規制されている。娯楽施設も閉まっているため、在留邦人たちが足を運ぶ先はスーパーぐらいだという。

 ミサキさんが買い出しの状況を説明する。

「食材の買い出しは1週間に1回程度で、基本自炊です。スーパーに入るのにも、1メートルの間隔を空けて並び、人数制限もありますので、1時間以上も待たされます」

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間隔を開けて並ぶ買い物客たち

 食事は飲食店でのテイクアウトに加え、デリバリーサービスも利用できる。後者の場合、部屋までは届けてくれないため、コンドミニアムの入口まで取りに行かなければならない。

「封鎖以降は部屋の中でユーチューブを見たり、本を読んだり、映画を観たりするぐらいですね。みんながネットを使うからか、通信速度が遅いです。ケーキを作ったりして、おかげで自炊力が上がりました(笑)」

 そんなミサキさんにとって最大の悩みは、収入が途絶えてしまったことだ。1年前からマニラの旅行代理店で働いてきたが、コロナの影響が観光業界を直撃し、仕事が減ってとうとう3カ月間の休暇を言い渡された。

「日本で仕事を探すか、フィリピンに留まって頑張るか。ただ、貯金もそんなにありませんので、生活コストの高い日本に帰っても……。日本の人々は普通に歩いているし、マニラのほうが対策は万全なので感染の心配もなさそう」

街では軍服姿の兵士が目を光らせている

 街を見渡せば、至る所に検問所が設置され、軍服姿の兵士が目を光らせている。マニラの幹線道路は深刻な渋滞がまるで嘘だったかのように、静まり返っている。そんな光景が日常となった今、マニラの在留邦人から見える日本の対応には、やはり不安感が拭えなかった。

街の至る所に設置された検問所には、迷彩服姿の兵士が待機している

 フィリピンの在留邦人は、直近の2018年10月現在、約1万6900人に上る。内訳は、大使館などの政府機関職員、日系企業の駐在員、現地採用、留学生、起業家、退職者などに大別される。

 上記のミサキさんは現地法人に採用されて働いており、駐在員や政府機関の職員とは異なり、日本から派遣されているわけではない。このため、今回のような非常事態が発生しても、帰国を促されることはない。これに対して駐在員の場合は、マニラ封鎖前に本社から指示があり、日本へ帰国した家族も少なくない。

 また、セブ島で語学留学中だった学生たち約1400人は、比政府による休校指示を受け、今月末までに臨時便で集団帰国した。