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シャイで気さくな素顔 忘れられない生「だいじょうぶだぁ」

 この辺で筆者が体験したささやかな志村さんご本人様との想い出を綴らせていただこう。’92~’97年ぐらいまでテレビ雑誌の記者をしていた筆者は、フジテレビ担当になった際、職権濫用とばかりに『火曜ワイドスペシャル ドリフ大爆笑』(’77~’97年)の収録をたびたび見学……いや、取材した。

 もちろんワタシなんぞは志村さんにとってはワンノブゼムもいいところ。顔どころか名前だって覚えられるはずもない。その後も『全員集合』のDVD-BOX制作に関わらせていただいたことなどもあり、志村さんの名舞台『志村魂』を鑑賞した際、図々しくも楽屋を訪ね、持参したドリフのベスト盤CDにサインをおねだりした。

志村けんさん © 文藝春秋

 すると志村さん、嫌な顔ひとつせずに「どっかで見た顔だな?」と仰りながら傍にあったサインペンでサインを書いてくださった。と、一瞬間があって、「俺、他のメンバーのサインも書けるんだよ」と言っていかりやさん他のメンバーのサインも周りにサラサラっと書かれ、「これ、本人からもらったって言っちゃっていいから」とひと言。驚きやら感動やらで私が困惑していると、生「だいじょうぶだぁ!」をご披露。

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 筆者の感激は書き表しようもないが、その直後、志村さんが浮かべられた“照れ笑い”が今でも脳に焼き付いて離れない。失礼を承知で書くが、“可愛い”のだ。そう、この可愛さは、『全員集合』の「金田一耕助コント」で、おばけや幽霊が出て恐がる志村さんに抱いた感情と同じだった。お歳上だろうがなんだろうが、志村さんは“可愛い”。だから老若男女問わず愛されたのだ。

世界をひとつにする傑作ギャグと存在感

『さんまの(SUPER)からくりTV』(’92~’14年/TBS)で有名になった、アメリカ生まれ日本育ちのタレントのセイン・カミュさんに取材した際にも「僕、心は日本人です。だから『全員集合』も観ていたし、“志村、後ろうしろ!”もやってました」と言われた瞬間、セインさんがグッと身近に感じられた。ドリフと志村さんのギャグは国の垣根を取り払い、世界をひとつにしてくれると実感した。

 先に書いた『飛べ! 孫悟空』の挿入歌「ゴー・ウエスト」には、“西にはあるんだ夢の国”とある。堺正章さんの『西遊記』(’78年)のエンディング曲でいうところのガンダーラ、つまり西方浄土にあたるが、志村さんはきっとそこで、三蔵法師に扮したいかりやさんと孫悟空姿で仲良くケンカをしているに違いない。今はそう思いたい。けれど今はそんな想像をしていても涙が溢れてきてしまう。

いかりや長介さん © 文藝春秋

 志村さんの功績とかそういう問題ではなく、今はもうひたすら悲しくて泣きたい気持ちと、感謝の気持ちでいっぱいです。

 天国でごゆっくりお休みください。こちらは涙枯れはてるまで泣き倒してから、また志村さんのギャグを思い出して笑えるよう努めます。