「新宿・歌舞伎町でキャバクラの女性従業員など十数人がコロナウイルスに感染」。そんなニュースが報じられたのは4月1日のことだ。その2日前には小池百合子都知事が緊急会見を行ない、バーやナイトクラブなどに行くことへの自粛を求めたばかり。
感染者は3月後半から増加し、キャバクラ嬢のほか、風俗店の男性従業員、スカウトなどに多いという。こうした危機的な現状に、そこで働く当事者たちは何を思うのか。歌舞伎町でガールズバーを経営するモフ男さん(仮名、35歳)に話を聞いた。(取材・文=押尾ダン/清談社)
状況が悪化したのはここ1週間
──歌舞伎町でコロナウイルスの感染者が増えています。率直にいってどう思いますか。
モフ男さん やっぱりというか、来るべきものが来たなと。歌舞伎町に遊びに来るのは年齢が比較的若い人たちです。感染して重症化するのは全体の2割程度で、高齢者に多いというのが世間一般の認識でした。若い子たちはコロナに対する危機意識がそれほど強くないので、自覚症状のない人がフラフラ飲み歩いていても不思議ではありません。
各店舗の経営者や従業員、そしてお客さんも、こういう状況になるのは薄々わかっていたと思います。
──感染者増加が報じられた4月1日の午後10時現在、歌舞伎町は閑散としています。通りにいるのはガールズバーのキャッチや居酒屋の客引きだけという寂しさです。
モフ男さん 2月ぐらいまでまだマシだったんです。もともと、この業界は2月が閑散期なので、「最近お客さんがちょっと少ないな」と感じる程度でした。3月に入って自粛ムードが広がっても三連休には街に人がたくさんいたほどです。状況が悪化したのはここ1週間ですね。同業者と話をしても、みんな一気にヤバいという雰囲気になっています。
休業を決意、スタッフは「家賃が払えない」「仕事がしたい」
──店自体はまだ営業を続けているんですか?
モフ男さん 今週からとりあえず1週間休業しています。決断をするまで相当悩みました。ほかのガールズバーと違い、うちの店はグラビアアイドル、地下アイドル、コスプレイヤー、舞台女優といった女の子が多いんですね。なんらかのイベントに出演することで収入を得て生活しているんです。
しかし、自粛要請で軒並みイベントがなくなり、アルバイト先のガールズバーまで休業してしまったら、彼女たちが生活できなくなってしまう。イベントコンパニオンをやっている子の場合、すでに丸々1カ月も仕事がないんです。それが来月も再来月も、もしかすると半年続くかもしれないわけですから、つらいと思います。
──家賃を払えなくなったり、生活費に困ったりすることになるかもしれません。
モフ男さん 休む前に彼女たちの気持ちを聞くと、みんな「仕事がしたい」と言っていました。コロナに感染する恐怖よりも生活の不安のほうが大きいのでしょう。それでも休業に踏み切ったのは、3月30日の記者会見で小池都知事がバーやナイトクラブに行くことの自粛を呼びかけたことが大きな理由です。全面的に賛成したわけではありませんが、いまみんなが協力する時期だと。そう女の子たちに話して、なんとか理解してもらいました。