新型コロナウィルスの感染拡大にともなって、世界一の歓楽街とされる新宿・歌舞伎町には、ほとんど人が歩いていない。居酒屋やキャバクラ、バーなどでは客足が遠のいていることがはっきりしていた。

 4月1日の夜、筆者が雨の降りしきる歌舞伎町を歩いていると、居酒屋などの店舗内は閑散とし、キャバクラやガールズバーは店舗を休業にしているところも少なくない。外から客席が見える店舗では、座っている客は数えるほどしかない。一人も確認できない店も複数あった。

自粛要請の影響が直撃した日本一の歓楽街、新宿歌舞伎町 ©渋井哲也

 夜の街から客足が遠のいた大きな理由は、3月30日に行われた小池百合子都知事の記者会見だ。そこでは、「キャバレー」「ナイトクラブ」「バー、酒場等」などの“特定業種”に関連した感染者が38人いたことが明らかにされた。年代別では20代が6人、30代が9人、40代が13人、50代が7人、70代が3人となっている。

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「感染経路が不明な症例のうち夜間から早朝にかけて営業しているバー、そしてナイトクラブ、酒場など接客をともなう飲食業の場で感染したと疑われる事例が多発していることが明らかになりました。感染のリスクが高い『3つの密』、換気の悪い密閉空間、多くの人が密集する場所、近距離での密接した会話。この『3つの密』がより濃厚なかたちで重なる場となっております」

小池都知事の会見をきっかけに「急に怖くなった」

 歌舞伎町の飲食店を訪れた客たちは、居酒屋のほか、キャバクラ、バー、ナイトクラブ、スナック、風俗店などに流れたりする。会見での小池都知事の呼びかけが、そうした層に響いたのだろうか。いつもなら、競うように声をかけるキャバクラの客引きたちも、いつになく大人しい。

客引きの姿もほとんど見当たらない ©渋井哲也

「先週から極端にお客さんが減りました。それでも、声をかければ、来てくれる人はいたんですが、今週になってから、街を歩いている人も減り、声をかけても、帰る人ばかりです」

 キャバクラ店で働いている女性キャストのEさん(20代)。先週までは出勤しており、「お客さんが減った」と話しながら勤務していた。しかし、3月30日夜、小池都知事の会見をきっかけに、「急に怖くなったので、自分から休むようにした」という。大学生でもあることから、生活費の不足分は親からの仕送りを増額交渉をしてまかなうつもりだ。