「もう刑務所には戻りたくない。本当です」

 しかし、と男は言葉を継いだ。

「二度とやらないという自信はありません」

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 2019年2月、長崎拘置支所の薄暗い面会室で共同通信長崎支局の石川陽一記者と向き合った男は、うつむいたままつぶやいた。

「性犯罪者」の男と面会した長崎拘置支所

何度も性犯罪を繰り返し、女性を傷つけてきた

 男の名は寺本隆志。2018年6月、たまたま通りかかった7歳の女児のスカートをいきなり背後から引きずり下ろして転倒させ、両膝に打撲を負わせるなどして、強制わいせつ致傷で逮捕され、拘置所で初公判を待っていた。

 寺本が逮捕されるのは初めてではなかった。これまで何度も性犯罪を繰り返し、女性を傷つけてきたのだ。

 最初の犯罪は1992年。東京都北区で妻子と同居していた寺本は、同じアパートに住んでいた女子中学生を刺殺。さらに、逃亡先の長崎市でも別の女子中学生の体を触った上で、高層マンションの踊り場から突き落として殺害した。

※写真はイメージです ©iStock.com

 約20年の服役を終えて出所すると、移り住んだ広島市で13年、強制わいせつ事件を起こして懲役4年の実刑判決を受けた。そして再度の出所後、半年もたたずに今度は長崎でまた逮捕された。

自ら「極刑」を希望したが……

 長崎で逮捕されたとき寺本は65歳。40代からの四半世紀、殺人、強制わいせつでの逮捕、収監、出所を繰り返してきたことになる。

 最初の殺人罪で逮捕されたとき、寺本は自ら「極刑」を希望している。少なくともそのときには罪を悔いていたはずだ。

 それなのに、なぜ、彼は更生できなかったのだろうか——。

 共同通信長崎支局の石川陽一記者は、この疑問を胸に拘置所を訪れた。