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160センチに満たない小柄な老人だった

 長崎拘置支所で石川記者と向きあった寺本は、160センチに満たない小柄な老人だった。小さな背中を丸めてさらに小さくし、冷たいパイプ椅子に座り、体と声を震わせながら話す姿はとても他人に危害を加えるような人間には見えない。

 寺本はカーキ色のハンカチを両手で持って口元に当て、石川記者との間にあるガラス窓に顔を近づけてぼそぼそと話す。表情や語り口は柔和だが、目はほとんど合わせようとしない。

 犯した罪について石川記者が問うと、寺本は丁寧に言葉を選びながら説明した。

「精神的なストレスがたまると気持ちが落ち込み、やけっぱちになってしまう。すると心のコントロールを失って過去に自分がやった犯罪のことを思い出し、性的な衝動を抑えられなくなります」

寺本から届いた手紙

「決してロリコンではありません」

 幼い女の子が好みなのか、と石川記者が尋ねると即座に否定する。

「決してロリコンではありません。同年代と仲良くなることもあったし、成人した女性の方が良い。でも性犯罪で狙うとなると、大人は私の体力的に厳しい。だから小さい子どもを標的にしてしまう」

 寺本は広島の事件で服役中に、刑務所で「再犯防止プログラム」を受講している。これは性犯罪で収監された受刑者を対象に、週2回程度、1回1時間半ほどのグループワークを実施するもの。受刑者に性に対する自身の認知の歪みを自覚させ、罪を犯した背景や再犯対策を考えさせる。プログラムの中で性犯罪の被害者が書いた手記を読むこともあった。

「私が言うのも変ですが、やられる側はこんなにショックを受けるのだな、と。怒りが痛いほど伝わってきました」