各地で猛威を振るう新型コロナウイルス。世界のほとんどの国で感染者が確認されている中、いまだ「感染者ゼロ」と公表しているのが北朝鮮だ。
「全世界が悪性ウイルス感染症の被害による大混乱に陥り、戦々恐々としている時に、我が国ではただ一人の感染者も発生していない」
「世界で最も優越な我が国の社会主義保健制度があるため」
北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は4月3日付論説でも、このように自画自賛するが、その信憑性も限りなくゼロに近いのが実情だ。
そんな北朝鮮国内から、他国ではあり得ない「過激なコロナ対策」が伝わってきている。 韓国の三大紙「朝鮮日報」(電子版、3月31日)には、次のような見出しが掲載された。
〈北朝鮮、コロナ患者の家の扉にくぎを打って5人皆殺し〉
記事によると、北朝鮮の咸鏡北道清津市で3月初め、新型コロナウイルスに感染した疑いを持たれた一家が、自宅ドアに釘を打ち付けられて強制的に隔離され、治療も受けられないまま、家の中で亡くなった。死亡した5人は製鉄所を退職した老夫婦と、その娘夫妻と子どもだったという。
執筆したのは、北朝鮮報道で知られる脱北者の朝鮮日報記者。同記事によれば、北朝鮮ではこの一家と同様の封鎖方法が他にも行われているという。さらに、対北消息筋の話として「北朝鮮ではコロナで死んでも、コロナという言葉を口にできないよう統制される」「北朝鮮はコロナ清浄国のイメージを維持するために、コロナの状況を隠ぺいしている」とも伝えている。
隔離中に銭湯に行き官僚は銃殺された
北朝鮮がどれだけ厳重に対処しているかが分かる“事件”は他にもある。例えば、中国訪問から帰国し、予防措置として隔離されたある官僚のケースだ。
同じく韓国三大紙の一つ「東亜日報」(2月13日付)によると、北朝鮮東北部の羅先(ナソン)市で、中国訪問後に隔離された官僚が2月初めに密かに抜け出し銭湯を訪れたところ、それが発覚。間もなく銃殺刑に処されたという。
また、中国と国境を接する平安北道(ピョンアンプクト)では、中国を訪問した事実を隠していた国家保衛省の大佐級幹部が、農場員に降格された事実も報じられている。