検査によって医療機関から「感染者である」ことが認定された場合、アプリ利用者はサーバーへと「自分が感染者になった」ことを通知し、スマホの中に記録された「過去14日間に濃厚接触した可能性がある人のリスト」をアップロードする。
するとサービス側から、そのリストにある人に対して「あなたは最近、感染者と濃厚接触があったことが確認できた」という通知が届く。その人はそれに従い、自己隔離なり医療機関での検査なり、必要な措置を進めることになる。
その際には、差別やトラブルを引き起こさないよう、「誰といつ濃厚接触したことが問題だったのか」は通知されない。
自分ではなく「社会」を守るアプリ
このことからわかるのは、「このアプリを入れていても、アプリ利用者の感染が防げるわけではない」ということだ。
感染拡大防止用のスマホアプリというと、感染しないように警告を発して自分を守ってくれるもの……という印象を持つかもしれない。だが、そもそもこの仕組みはそうした目的で作られていない。
アプリが作られる目的は、感染が疑われる人が自己隔離や検査などの措置を指示に応じて行うことを助けることであり、どこに居住している人にどのくらい感染が拡大しているかを把握し、感染拡大対策を政府などが進めやすくするためだ。
極論すれば、アプリを使うのは「自分を感染から守るため」ではなく、「社会で感染が拡大することを防止するため」である。
平将明IT担当副大臣は、4月13日、ネット放送局・ABEMAの番組「報道リアリティーショー #アベプラ」に出演した際、アプリ導入の流れについて以下のようにコメントしている。
「どこから導入するかは検討中だが、いきなり全国ではなく、一部地域、もしくは自衛官や警察官向けに導入することも考えられる」
自衛官・警察官に先行導入する、という点で、このアプリの性質がよりわかりやすくなるのではないだろうか。彼らは感染対策の前線にいて感染しやすい一方で、感染を自ら広げる対象になるわけにはいかない。「疑い」の段階でも感染の可能性を素早く把握して対応することが求められる。データからどのタイミングで感染が広がったかを分析し、感染抑止に役立てることも必要だ。