各社員の働きぶりが手に取るようにわかる
私の知り合いの会社ではテレワークを実施してみて数週間になるそうだが、その結果、各社員の働きぶりがかなり明確に把握できたという。企業の管理者の立場から見れば、社員が目の前のデスクに座らずに自宅で仕事をすると監視が行き届かなくなり、業務効率が落ちると考えがちだが、実際には社員のその日の成果をトレースすることで個々の社員の働きぶりが逆に手に取るようにわかったという。
なんとなく集団に紛れて仕事をあまりしてこなかった社員が自宅でパソコンを前にして何をやっているかを逐一チェックできるようになった結果、その社員の今まで見えなかった部分が露わになったとでもいえようか。
ある会社では今回の緊急事態宣言を受けて、会社の本社機能を東京とは別の場所に分散させたという。また、これまでは一つのフロアに多くの社員を集めていたのを、都内の別の場所へとフロアを分散させることも考えているという。この会社が言うには、役員全員が同じビルの同じフロアで濃厚接触をしながら会社経営を行うことはリスクであると、今回痛感させられたのだそうだ。
企業社会の常識やルールにおける“大変革”
どうやら新型コロナウイルスの蔓延とそれに伴う苦肉の策として始まったテレワークは、日本人の働き方に大いなる副産物をもたらしたようだ。
つまり、社内外でのコミュニケーション方法の変化により仕事に対する見方が変わり、行動が変わる。コミュニケーションスキルも従来の「ライブ」におけるノウハウから、通信機器を通じた世界で通用する別のノウハウが必要になっている。また今までの会社という組織、集団の中では見えてこなかった業務の非効率が白日のもとにさらされるようになり、社員の人事評価にも影響が出てきている。
そしてこれまで、とにかく都心の便利の良いエリアで大きなビルのワンフロアに社員全員が集まって朝から夕方まで時間通りに仕事する――こうした働き方の「あたりまえ」が変わる。それは働き方然り、そして今回の新型コロナウイルスのような脅威への対応も含め、会社機能を分散させる方向へと舵を切っていく動きが顕著になってきそうだ。
働き方の変化はこれまでの勤労者を幸福にも不幸にもする。こうしてみるとテレワークは一時的な非常措置としてのものではない、企業社会の常識やルールに大変革を与えるものになりそうなのである。