新型コロナウイルスの感染拡大は国内外あらゆる業界に影響を与えている。中でも、一部では満員電車が感染拡大の温床になるのではないかという見方もされている鉄道業界への影響は大きい。3月3日、JR東日本は今年2月の鉄道事業収入が約110億円減収する見通しを発表した。新幹線の利用者数は前年から1割減、山手線も朝の通勤時間帯の利用者が1~2割減少し、3月の新幹線指定席予約状況は5割も減ったという。都心で電車に乗っていると、相変わらず満員だなあと感じることも少なくないが、それはもとからの利用者数が多かっただけのこと。数字を見る限り、やはり“出控え”の影響は大きいのだ。

朝の通勤時間帯の利用者が1~2割減少しているという山手線
満員電車は感染リスクが高いと言われる ©iStock.com

九州新幹線でも減収

 では、JR東日本以外の鉄道事業者ではどのような影響が出ているのか。都心で山手線に接続する通勤路線を持つ西武鉄道では、「具体的な数字は控えたいが全体的な利用者数は減少傾向が見られる」(同社広報部)という。

「通勤時間帯の利用が減っているほか、全体的な出控え傾向やレジャー施設の休園等により、特に定期外利用のお客さまが減少傾向にあります。時差通勤によって早朝6時~6時半の利用がやや増えていますが、顕著な影響があるほどではありません」(同)

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西武鉄道でも定期外利用の乗客が減っているという

 JR東日本の新幹線同様、地方でも中長距離路線の減収は大きい。JR九州の九州新幹線では、2月の速報値で博多~熊本間が前年比93%、熊本~鹿児島中央間が前年比92%。また、日豊本線(小倉~行橋)と長崎本線(鳥栖~肥前山口)の特急列車の利用人員は2月1~25日までの速報値で前年比12%減っているという。

「春節期間が前年とずれていることなどもあり、一概にすべてが新型コロナウイルスの影響とは言えませんが、ホテル等にもキャンセルが発生しています」(JR九州東京広報室)

2月の速報値で博多~熊本間が前年比93%という九州新幹線

 鉄道各社では2月25日から国土交通省の要請に基づいて利用者に時差通勤・テレワークの呼びかけを行なっているが、「開始からまもないこともあって具体的な変化は把握できていない」(JR九州)というが、通勤利用よりも全体的な“出控え”が及ぼしている影響の方がより大きいと言えそうだ。