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JR東は2月110億円減収も 新型コロナ“出控え”で鉄道各社の収入はどのくらい減る?

2020/03/07
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 ただ、こうした感染予防の取り組みについては事業者ごとに多少の温度差があることも事実。“緊急事態宣言”が出されている北海道のJR北海道では「定期的な清掃以外に消毒などは行なっていない」(同社広報)という。列車の運行についても同様で、JR北海道の釧網本線で毎冬運転される「SL冬の湿原号」は付随するイベントこそ中止になったが運行は通常通り(3月1日で今季の運行は終了)。鈴木直道知事の緊急事態宣言や外出自粛要請などを受けた間引き運転なども現状では検討していないという。

JR北海道の釧網本線で毎冬運転される「SL冬の湿原号」。運行は通常通り

「間引き運転」の可能性はある?

 不要不急の外出を自粛する“出控え”ムードが広がるが、かといって鉄道事業者にとっては簡単に列車の運転本数を減らすことは現実的な選択肢とは言えないだろう。ただ、まったく検討していないかというとそうでもないようで、JR西日本の東京広報室は「国内の状況が深刻化し、当社社員の出勤状況も芳しくないような事態になれば間引き運転などの可能性もあると考えている」と話す。

 同様に西武鉄道でも「現時点で列車運行への影響はなく、運行本数削減の予定もない」とした上で「万が一乗務員や駅員などの人手確保が難しくなった場合、係員の欠員状況に合わせて適切に対応できるよう検討している」(同社広報部)と、間引き運転などの可能性は考慮に入れているようだ。

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 JR九州では、今年2月の訪日外国人向けの「JR九州レールパス」の発売枚数が対前年比で約5割にまで激減している(もちろんこれも春節時期のズレの影響もあるが)。こうした状況は今後しばらく続くことになるだろう。幸い、大手事業者の多くはインバウンドや観光利用が占める比率がもともと低く(通勤通学利用が中心)、経営問題に直結するようなこともなさそうだ。

 ただ、新型コロナウイルスの感染拡大がおさまらずに“出控え”が続けば、観光客の利用を促進してかろうじて延命してきたような地方ローカル線の事業者にとっては存続に関わるような状況に陥ることも考えられる。そうした事態を防ぐためには、やはりこれ以上の感染拡大を食い止めることしか手立てはなさそうである。

東北新幹線。JR東日本によると3月の新幹線指定席予約状況は5割減

写真=鼠入昌史

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