「売春島」の現状は?
――2016年のサミットをきっかけにクリーン化の流れが加速したと聞きます。島の現在はどうなるのでしょう。
高木 風俗が一気に多様化した2000年ごろを境に、島の売春は衰退に向かいました。今はかろうじて残っている、風前の灯火ですね。今年1月現在の情報では、島で稼ぐ女の子は日本人2人、タイ人2人の計4人。島に住んでいるのはタイの女の子1人だけ。あとの3人は仕事に応じて通っている。置屋は実質2軒ありますが、いずれのオーナーも高齢です。
取材を通じてとくに印象に残っている言葉が2つあります。一つは、島で8年ほど売春しているミドリ(仮名)という女性がふっと漏らした「この海に万札垂らすと、人魚(=私たち)が食いつくんよ」というしゃれた言葉。笑みを浮かべてはいたけれど、このままこの仕事を続けていていいのかなあ……という迷いも含んだような哀愁が漂う話し方だったのが心に残っています。
もう一つは、置屋オーナーの女性の「もう、この島の歴史は死なしといたほうがいいよ」ってひとこと。売春を斡旋する置屋なんだから「島の浄化、クリーン化なんてけしからん!」って威勢のいい話をしてくれると思ってたのに「もうダメなものはしょうがないよ」というんです。時代が終わるとはこういうものなんだと思いましたね。
最近、「NEWSな2人」という番組で、渡鹿野島の島おこし企画があって、NEWSのメンバーが島でロケをしたんですよ。番組の放送後はファンのちょっとした聖地になって、ジャニーズ好きな女性が押しかけてるらしい。ただ、ファンの子たちが宿泊するのはNEWSのメンバーが泊まった大型ホテルのみで、ほかの旅館にはほとんどお金が落ちていない。
離島というロケーションで、温泉があり、飯もうまい……ということなら、それはそれで観光資源です。僕としては、売春でもNEWSの聖地でもいいので、島民たちが一つになり、島全体が平等に潤ってほしいと思っています。