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今も思い出す、甲子園がグリーンウェルで沸いた1997年5月のこと

文春野球コラム2020 90年代のプロ野球を語ろう

2020/04/19
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“お祭り感”が垣間見えた強烈デビューから一転……

 ここからは試合翌日のスポニチ紙面とともに振り返りたい。1面の見出しは「強烈デビュー やっぱりすごい!グリーンウェルWタイムリー」と赤と金の文字がど派手に並んだ。写真は、叫びながら豪快に三塁ベースに滑り込む姿。「5割復帰や黄金週間や」の小見出しに今も昔も変わらない関西のスポーツ紙らしい“お祭り感”が垣間見えた(ちなみにこの日は現ロッテ監督のダイエー・井口資仁もデビュー戦でグランドスラムを放つ離れ業をやってのけていた)。3回にセンターへ運んで先制点を呼び込むと、8回には右中間へダメ押しのタイムリー三塁打を放って2安打2打点の活躍。待ち望まれた助っ人はまさしく救世主として聖地に降臨した。

©スポーツニッポン

「なんか凄そうな頼りになる外国人選手が来た」。阪神が勝てば甲子園がこれほどまでに盛り上がる。グリーンウェルとの出会いは1人の小さな阪神ファンにとって刺激的だった。ただ、人生にはこんな楽しい瞬間が毎日のように訪れるという幸福感とともに、予想できないことが間近で起こりうることも僕は学ぶことになる。再び背番号39に酔いしれることは二度となかったからだ。

 10日の巨人戦で右足に自打球を当てて骨折。有名な「野球をやめろと神のお告げがあった」との“名セリフ”を残して現役引退を宣言し出場7試合で退団の運びとなった。

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 7試合で6安打、0本塁打、5打点。タイガースに残したものは少なくても、僕の脳内は「グリーンウェル」で検索すれば、すぐにあの甲子園が沸いた1日が蘇ってくる。好きな選手と聞かれれば「新庄」「藪」と答えるが、思い出に残る選手となれば答えは違う。あの時は夢にも思わなかった「新聞記者」として今はタイガースに関わる日々。「仕事」として選手やチームと向き合うからこそ、ふとした瞬間、僕はグリーンウェルのいたあの5月を思い出す。

©スポーツニッポン

チャリコ遠藤(スポーツニッポン)

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