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変死体の鑑識活動に着ていく防護服がない

 首都圏のある警察署の警備公安部門に勤務する幹部は、特有の“警察文化”が感染拡大を助長してしまっていると語る。

「警察官は、事件事故はもちろん、地震などの非常事態に即応できるよう訓練し、日頃からその心構えも持っている。多少熱があっても自ら言い出さず、無理をしてでも勤務する文化だ。体調不良を訴えたら『お前、不覚を取ったな』と言われてしまう。コロナ騒動がこれだけ拡大してやっと『なるべく早く言い出した方が迷惑を掛けずに済む』と認識されてきた」

 警察署でのコロナ感染で、最も気を使うのは、渋谷署で集団感染が明らかとなった留置場の管理だという。

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「取調室なら、容疑者と距離を置いたり換気したり工夫のしようがある。ただ、留置場はまさに“密室、密接、密集”の『3密』状態です。微熱があるという留置人が入ってくるケースでも、病院に連れては行くがすぐに検査してもらえないので、結局は留置場に入れるしかない。感染が後から分かって、すでに他の留置人に感染していたら責任問題。渋谷署のケースも他人事ではない」(同前)

新型コロナの感染拡大は捜査現場にもさまざまな影響を与えている(写真はイメージ) ©iStock.com

 さらに、いま警察官の中で最も感染リスクの高い仕事についているのは、刑事課の鑑識担当だという。孤独死を含めた変死事案があった場合、死亡した人が感染者かどうか分からないまま現場で対応しなければならないからだ。実際、コロナ感染者の変死事案は急増している。

「感染防止のための防護服は署内にわずかしかない。それも一度、使ってしまえば再利用できないため、感染者と特定されていない変死事案では使えないのが実態だ。さらにマスクは個人で買ったものを使っている。これだけコロナ騒動が広がってくる中、鑑識は命がけです」(同前)

 マスクについては、用意周到にマスクを備蓄していた署では署員に配布されているというが、署員が私物を使っている署も少なくない。署によって対応が分かれている状況だという。