1ページ目から読む
4/4ページ目

警視庁公安部は「エスと接触するな」

 公安部門の捜査員には、刑事部門とは違う指示が出ている。東京で感染者が急増していくさなか、警視庁公安部では次のような指令が捜査員に出された。

〈情報を提供してくれる協力者とは当面の間、接触するな〉

 公安部の監視対象は、極左暴力集団で言えば革マル派や中核派のほか、独立系や暴力団系統など様々な形を取る右翼団体、北朝鮮などの外国スパイ、かつて地下鉄サリン事件など多くの凶悪事件を引き起こしたオウム真理教から分派して行った新興の宗教団体など幅は広い。

ADVERTISEMENT

警視庁公安部では「協力者とは当面接触するな」との指令がでたという ©iStock.com

 公安部の指示にある「協力者」とは、警察に様々な情報を提供する捜査協力者を指す。警察内部では、スパイの頭文字を取って「エス」と称されることもある。公安部の捜査員は、監視対象となる団体のメンバーの行動確認などから活動実態の解明を進めるだけでなく、監視団体の内部に捜査情報を提供してくれる協力者の育成にも余念がない。

治安に直結する“警察崩壊”を防げるか

「感染をきっかけとして協力者が発覚することを公安部幹部が恐れている。協力者と接触した後に、その協力者の感染が判明したらどうなるか。医師の問診、保健所などの感染ルートの調査などで、思わぬことから捜査員と接触していたことが発覚しかねない」(公安部捜査員)

 警察の協力者が情報を流していた「裏切り者」とされれば、団体内部で制裁を加えられることが考えられる。さらに、団体内から情報を取ろうとしていた捜査員の身元が感染ルートから明らかになって、捜査員の身に危険が及ぶ可能性もあるのだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大で“医療崩壊”の危機が取り沙汰されている。治安に直結する“警察崩壊”が起こらないことを祈りたい。