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鉄道と志村けん、その縁は映画『鉄道員(ぽっぽや)』だけではなかった

故郷と被災地への思い、そして映画俳優

2020/04/22
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「駅を利用する人といつも繋がっていたいから」

 三陸鉄道の吉浜駅は、志村けんが非常勤駅長を務めている。就任は東日本大震災から約2年後の2013年4月3日。三陸鉄道南リアス線(当時)の営業運行再開に合わせて、志村けんが被災地慰問の旅に出るというテレビ番組『志村けんと行く!勝手にドッキリ感動旅!』が制作された。志村けんが沿線の人々に笑いと感動を仕掛けていき、その締めくくりに吉浜駅の駅長に就任した。

三陸鉄道の吉浜駅。東日本大震災による津波で壊滅的なダメージを受け、三陸鉄道は全線不通となっていたが、2013年4月3日に盛ー吉浜駅間が営業を再開した ©︎文藝春秋

 就任セレモニーの報道記事によると、志村けんは「私が変なおじさんです」と挨拶。バカ殿などで忙しく常勤は無理と笑わせつつ「駅を利用する人といつも繋がっていたいから」と、自身のポスターと「志村箱」の設置を提案した。「志村箱」は志村けんへの相談事などを投函してもらい、志村が東京で読めるように、というアイデアだ。また、同じテレビ番組で訪れた島越駅にも「アイーン」のポーズの等身大ポスターが設置された。

吉浜駅の献花台には……

 2020年4月1日の岩手日報によると、吉浜駅では志村駅長の等身大ポスターと「志村箱」が継続されており、その前に献花台が設置されていた。吉浜駅がある大船渡市の内外から多くの来訪者があり、花や酒が手向けられた。

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志村けんが「非常勤駅長」を務めていた ©︎文藝春秋

「志村箱」は志村けん宛てのほか、三陸鉄道へのご意見箱も兼ねている。しかし、4月16日の緊急事態宣言対象区域拡大を受けて、吉浜駅、島越駅のポスターは撤去されたと報じられている。人が集まることを防ぐためとのこと。事態が収拾した後の聖地復活を待ちたい。