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高倉健からの留守番電話

 JR北海道、根室本線の幾寅駅は、高倉健主演の映画『鉄道員(ぽっぽや)』のロケ地「幌舞駅」だ。この映画では志村けんが炭鉱夫として、笑いどころのない「切ないおじさん」を演じた。

 志村けんはテレビと舞台のコントのイメージを大切にしており、俳優は気が進まなかったと言われている。しかし、本作では高倉健の推薦があり、志村けんの自宅の留守番電話には高倉健からの出演依頼伝言が残されていた。志村けんは「健さんの指名ならば」と承諾したという。

故・高倉健さん ©︎文藝春秋 

 幾寅駅には、現在も映画のロケセットが残されている。高倉健がプラットホームから見送った赤いディーゼルカーも保存されている。実物の幾寅駅舎も待合室の半分が撮影に使われており、映画のポスターなど資料を展示しているそうだ。

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 その幾寅駅にも追悼記帳所が設置された。ニュースサイトや訪問者が投稿した動画には、会議用折りたたみ長テーブル2台分の広さに載せきれないほどの花と供物が映っていた。外出自粛の折、動画投稿サイトでロケ地と故人を偲べる。投稿者に感謝だ。

幾寅駅にも設置された追悼記帳所(「北海道新聞動画ニュース」より)

志村けん最初で最後の映画出演となった

 志村けんの映画出演は、1968年の『ドリフターズですよ!冒険冒険また冒険』、1969年の『ドリフターズですよ!特訓特訓また特訓』がある。ただし、当時はドリフターズの付き人で端役、本名の志村康徳名義だった。それから30年ぶりの本作は「志村けん」名義だ。コントのスターとなって知名度を上げてから初の映画出演だった。2020年公開の映画『キネマの神様』の主演も決まっていた。しかしこれは叶わず「志村けん」の映画出演は『鉄道員(ぽっぽや)』が最初で最後となった。

『鉄道員(ぽっぽや)』の舞台は国鉄分割民営化直後、JR北海道のローカル線だ。幌舞線は実在しない。しかし、美寄という架空の町から分岐するという設定だ。宗谷本線に「美深駅」、「名寄駅」が存在する。かつてデゴイチが長い石炭列車を走らせていたという描写もあった。鉄道路線図を思い浮かべて、どうやら道北の内陸にある旧炭鉱路線だろうな、と想像できる。