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マスクの在庫があっても買うお金がない

「多くの客は食料品や特売品が目当てだったと思います。うちのお店は、売れ筋がお惣菜やカップ酒で、客単価は700~800円。今を生きることで精一杯のお客様も多いので、1000円分の買い物をして、マスクを求めるお客さんはそこまでいなかったわけです」(別のスタッフ)

 日々の生活に困窮する人達にとっては、マスクの在庫があっても、手に入れるカネがないのだ。40年以上、西成区のあいりん地区に住むBさん(60代男性)に話を聞いた。

あいりん地区に住むBさん ©文藝春秋

「毎週火曜と土曜の昼11時にあった三角公園の炊き出しが中止になっちゃったんだよ。1カ月前くらいかな。みんな並ぶから。食べれない人もいて、西成は大変なことになっている。今の収入源は『特掃』(高齢者特別清掃事業)だが、3日に1回、5700円入る。金が入ったらそこの玉出で買い物するんだ。キムチとかバナナとか、後はフライとか。自分の好きなもん買って、それでも500円くらい。白飯買って、3日くらいは持つ。普段はギャンブルに使うんだけど、いまギャンブルの店が自粛でやってない。競馬もパチンコも。だから今は貯まった金を大事に使っている」

 Bさんは、ショルダーバッグから「特掃」の仕事で稼いだ封筒の束を見せてくれた。

「特掃も厳しいよ。仕事の前に体温はかって37.5度超えたら仕事ができなくなるんだよ。まだ周りでは1人も(陽性は)出てない。もし1人でも出たら終わっちゃう。ワシがコロナになったら、『お前のせいでえらいことに(働けなく)なった』って、みんなにボコボコにされちゃう」(同前)

炊き出しがなくなった三角公園 ©文藝春秋
三角公園の住人でマスクをしているのは半数ほど ©文藝春秋

 スーパーから徒歩5分の場所に「あいりん地区」はある。多くの住人が集まり公園で談笑している中、マスクをしているのは半数ほどだ。マスクの購入先を尋ねると、「たくさん持っている仲間からもらった」という。

「仲間内でうまく調達してくれるヤツがいるんだ。それを洗って何度も使っている。もしマスクがなくても体には自信がある! 外で寝てるし体は強いんだ。コロナなんて罹らないと信じたい。国からマスクが届くって言ってるけど、ワシらはもらえるのかな。どうせならやはり現金がほしい。でもありゃあ(給付金は)ワシは無理だ、住所がないから」(同前)

 現在、ウイルスの影響で失業者、一時休職者が世界中に溢れている。「ステイ・ホーム」のスローガンが叫ばれても、家がない人もたくさんいる。韓国では3月にはいり160万人が一時休職に入り、失業の危機にあるという。米国はさらに深刻で、米労働省によるとトランプ大統領が非常事態宣言を発令してから4週間で、新規失業保険申請数は2200万件に及ぶ。日本でも今後多くの一時休職者、失業者の発生が予想される。各国の惨状は対岸の火事ではないのだ。

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