「ああ、やっぱり来たか」
東京大学の渡辺努教授は、今回の新型コロナウイルスに関しても東日本大震災の時と同じような「消費パニック」が起こるはず、と予測していた。ところがダイヤモンド・プリンセス号の検疫が大きな問題となった2月半ばを過ぎても、なかなかパニックは起こらなかった。
「日本人の買い物になかなか変化の兆しは現れませんでした。株式市場は落ち着いたままで、トランプ大統領もぜんぜん意に介さないコメントを続けていました」
そして2月下旬~3月初め、ついに予想どおりの動きを目にしたときは、むしろ驚いたという。スーパーマーケットに消費者が押し寄せ、商品棚が空になる……新型コロナウイルスが引き起こした消費パニックがデータにはっきりと表れたからだ。
スーパーの売上は前年比で約20%増
全国1000店舗のスーパーから集めたPOSデータ「日経CPINow」を見ると、スーパーの売上は急激に上昇したことがわかる。3月初めには前年比で20%増に達する勢いだった。
「急上昇した2月27日は、『トイレットペーパーが不足する』というデマが流れ、マスク、消毒グッズに加えてトイレットペーパーなどの紙類が品薄になったと報じられたころです」(渡辺氏)
先が見えない異常事態に置かれると、人々は「最悪のケース」を想定して行動することが過去の研究から知られているという。それがスーパー、ドラックストアの特需につながった。
たとえば、3月4日時点での価格の上昇率は、1位が即席カップめん、2位が穀類(お米)、3位が即席袋めんで、以下はトイレットペーパーなどの日用紙製品やヨーグルトが続く。