新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、これから患者が急増すると、日本でも本格的な「医療崩壊」が起きる可能性が指摘されている。感染爆発のニューヨークでは、遺体安置所不足、葬儀事業者の人手不足による「葬儀システムの崩壊」が深刻化しているという報道もある(4月13日、日経ビジネス)。
日本屈指のコメディアン・志村けんさんが新型コロナウイルス感染症に伴う肺炎のため、3月29日に亡くなった。志村さんの兄・知之さんは報道陣の取材に対し、入院した後は面会できないままで、「顔を見られずに別れなくてはならなくて、つらい」と話した。知之さんの悲痛な表情とともに、このとき初めて、感染症で亡くなると故人に会えないまま火葬される事実を知った人も多いだろう。
現在、日本の葬儀業界はどのような影響を受けているのか。これまでに新型コロナウイルス感染の疑いで亡くなった場合の葬儀も受け入れてきたという葬儀社・アーバンフューネスの有坂立朗さんに話を聞いた。(取材・文=真島加代/清談社)
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葬儀の流れが大きく変わる
――新型コロナウイルスに感染して亡くなった場合の葬儀の流れについて教えてください。
有坂立朗さん(以下、有坂) 通常の葬儀は、お通夜と告別式、火葬を含めて2日間で行い、式後にはお食事をするのが一般的です。しかし、新型コロナを含む感染症で亡くなった場合は、葬儀の流れが大きく変わります。まずはご遺族から葬儀社に一報いただき、葬儀社経由で火葬場に連絡。その後は、厚生労働省が定めている「埋火葬の円滑な実施に関するガイドライン」に沿って火葬が行われます。このガイドラインには、新型コロナに限らず、新型インフルエンザ等の感染症で亡くなった方のご遺体の取り扱い方法、埋火葬方法が詳しく記載されています。そのほかの細かい流れは、葬儀社と火葬場の独自ルールで動くのが通例です。
一般的な葬儀との大きな違いは、火葬までの早さ。法律上は、亡くなってからご遺体を24時間以上安置しなければ火葬できませんが、感染死の場合は 「24時間以内の火葬」が認められているんです。極端な話ではなく、病院で亡くなった直後に火葬場で火葬するという対応も可能になります。
――安置する期間がまったく違うんですね。24時間以内に火葬する理由とは?
有坂 やはり、感染拡大防止ですね。安置施設で長時間ご遺体を預かること自体が感染のリスクを高めてしまうので、亡くなってすぐに火葬するという形式を取らざるを得ないのが現状です。16時以降など、通常は動いていない時間の枠を使って火葬をするケースが多いですね。火葬場のルールに則って行うので、火葬する時間帯も含めてご遺族に選択の余地はありません。