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棺のフタを開けることができない

――たしかに、病院で亡くなってすぐに火葬となってしまっては、遺族が故人に会う時間がなさそうですね。

有坂 時間的な余裕もありませんが、そのほかにも故人と対面できない理由があります。一般的な火葬では、最後に棺のフタを開けて故人とのお別れをする流れがありますが、感染死の場合は棺のフタが専用のテープで閉じられているので、顔を見ることはできません。原則として「棺のフタを開けること」自体が認められていないんです。

※写真はイメージです ©iStock.com

 また、感染症で亡くなった故人のご遺族は、親しい人であるほど濃厚接触者の疑いがあります。感染防止のために近親者が火葬に立ち会えなかったり、5名程度など極端に立会人数を制限したりと、独自ルールを設けている火葬場が多いようです。

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「透明の納体袋」で顔を見られるか

非透過性納体袋(アーバンフューネス提供)

――感染死の場合は、故人の遺体の扱い方にも違いがあると聞きました。

有坂 そうですね。先述のガイドラインでは「非透過性納体袋」の使用を推奨しています。大人がすっぽり入るサイズのビニール素材の納体袋でご遺体を納めれば、故人の体液(鼻水、血液など)経由での感染を防ぐことができます。とくに病院から火葬場にご遺体を搬送する際は、対応する医師や霊柩車のドライバー、葬儀社や火葬場のスタッフなど多くの人手を必要とするので、彼らの安全を守る意味でも納体袋の使用は必要不可欠だと思います。

――「非透過性納体袋」は遺体が見えない仕様になっていますが、先日、神戸市が遺体を包む「透明の納体袋」を用意したことが話題になりました。納体袋が透明なら、故人に最後のお別れはできるのでしょうか?

有坂 たしかに、透明ならばご遺体と対面することもできると思います。ただ、病院で亡くなってすぐに火葬場に搬送するのでその間に少し会える程度かもしれません。火葬場では棺のフタを開けることが許されていないので、現状のルールでは、透明の非透過性納体袋になっても故人の顔を見るのは、なかなか難しいかもしれません。