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感染死の葬儀 手探りで動いている

――今回の新型コロナの流行は、葬儀業界全体にも影響が出ていますか?

有坂 新型コロナの葬儀対応の難しさは、治療法も対策も確立されていない点にあります。我々葬儀社も火葬場も、手探りで動いている状況です。もしかしたら、今日と明日でルールが変わっているかもしれません。現在は通常の葬儀でも、通夜・告別式で不特定多数の人々が集まるだけでも感染リスクがあるので、かつてのルールや概念が通用しない状況です。ご遺族から「一般葬の予定だったが、家族葬に変更したい」というご相談を受けるようになりました。不特定多数の人が集まって食事をするリスクを避けるために、我々からも式後の「お食事なしコース」をご遺族に提案するようにしています。

※写真はイメージです ©iStock.com

――一般的な葬儀を行うことも難しくなっているんですね。

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有坂 最近では「リスク回避」を理由に、新型コロナで亡くなった方の受け入れを大手葬儀社に断られた、というご遺族もいるようです。何軒かに断られて、弊社にお問い合わせをいただく案件も増えてきていますね。弊社はもともと、様々なご家庭から葬儀のご相談を受け入れているので、感染死の葬儀も比較的スムーズに受け入れています。とはいえ、国や自治体の方針に基づいて火葬場の利用方法が突然変わるなど、状況の変化が激しいので、我々もどういうフローが正しいのかを探りながら動いているのが正直なところです。

防護服や非透過性納体袋の不足

――今後、どのような事態が懸念されますか?

有坂 いずれにしても、感染の拡大が続くかもしれないので、状況に応じた柔軟な対応が求められると思います。当然、葬儀スタッフも感染リスクがあるなかでの仕事になりますので、マスクだけでなく防護服やゴーグルの常時着用など、防護具を強化する必要がありますね。

※写真はイメージです ©iStock.com

 一番の懸念は、防護服や非透過性納体袋など備品の不足です。これまでも感染症で亡くなった方のご遺体は、非透過性納体袋にお納めして24時間以内に火葬していましたが、1年に数回あるかないかのかなり稀なケースでした。葬儀社でも非透過性納体袋を1、2枚ストックしていれば問題ありませんでした。しかし、今の新型コロナの広がりを見ていると、今後「非透過性納体袋」が入手しにくくなる可能性が高く、不足品の対策は必須でしょう。次々と出てくる課題を乗り越えるためにも、葬儀社や火葬場、関係各所が足並みを揃えていく重要性を感じています。

※写真はイメージです ©iStock.com