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そもそもなぜ「籠原行き」が多いのか

 では、そんなクソ暑い籠原、一体何があるのか。そもそもなぜ「籠原行き」が多いのか。その答えは、だだっ広い駅の構内にある。籠原駅は、1969年に籠原電車区が設置されて以来高崎線の運転上の重要地。今でも籠原運輸区があって運転士や車掌が所属しているし、広い構内は高崎車両センター籠原派出所、わかりやすく言えば車両基地がある。籠原より北にある駅は10両編成までしか乗り入れることができず、15両編成の高崎線は籠原駅で5両だけ切り離し。だから、籠原駅には取り残された短い5両だけの電車が寂しく佇んでいるのだ。

 

 ともあれ、そんな交通の要衝という理由から、「籠原行き」が乱発されているというわけだ。つまり、籠原は鉄道の街。今でこそいろいろなものが自動化されているが、一昔前までは車両基地がある街は鉄道関係者がたくさん住んで賑わったという。ならば、籠原駅周辺にその名残りがあるはず。というわけで、駅前に出てみると……。

 

 はい、何もありません。いや、もちろんど田舎の無人駅ではないから住宅地は広がっているし、駅前にはコンビニがあったりロータリーがあったりはするのだが、他は特に何もなし。北口の駅前は広場の整備中ということでますます寂しい印象しか残らない雰囲気である。すこし北に歩けば旧中山道があるが、籠原付近には宿場町があったわけでもないのでこれまた何もなし。

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「いや~、わざわざ駅前の店に行こうと思う人はいないと思うよ」

 2011年にはE'site籠原という商業施設が駅前にオープンしたというので行ってみたが、テナントはローソンとタリーズコーヒーくらい。それまではいくつも店舗が入っていたようだが、大半が空き店舗になっていた。これじゃかえって寂しさが募るばかりである。

 

 その商業施設を歩いていたお爺さんに話を聞いてみると、「いや~、この辺に住んでいる人でわざわざ駅前の店に行こうと思う人はいないと思うよ。だって仕事してる人は高崎とか大宮、東京まで行っちゃうし、飲んだり食べたりは職場の近くで済ますでしょ。ずっと家にいるのは年寄りと子供と奥さん方ぐらいだから」と言う。駅の南側は、しばらく歩くと熊谷工業団地があり、通勤駅としての機能もあるようだが駅前の賑わいにはつながっていない。