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2020/04/25

西洋絵画史を丸ごと辿れる

 ロンドン・ナショナル・ギャラリーの展示となれば、英国の国民画家たるこの人の作品はやはり欠かせない。ウィリアム・ターナーの《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》も会場で存在感を放っている。

 光や蒸気、大気の様子など、特定の形がないものを絵画に捉えんとしたターナーは、印象派の先駆者とみなされる。たしかに画面の奥のほうから射す光は眩しくて、そこに何か光源が仕組まれているんじゃないかと思わせるほど。陽射しが連れてくる温かさまで感じられて、そのリアルな感触が絵の前を離れてもつきまとってくる。

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー《ポリュフェモスを嘲るオデュッセウス》1829年

 他にも同展には、思わず足が止まって動けなくなる作品が目白押し。イタリア・ルネサンス絵画ならティツィアーノやティントレットがあるし、オランダ絵画ではフェルメールの《ヴァージナルの前に座る若い女性》ももちろん必見。ムリーリョ、ゴヤらのスペイン絵画、ヴァン・ダイクの肖像画にカナレットの風景画は、西洋絵画表現の幅広さと奥深さを感じさせる。

 モネ、ルノワールら印象派から、ポスト印象派に至ってセザンヌ、そしてゴッホの《ひまわり》に至る19世紀絵画の流れも充実していて、なんとも盛りだくさんだ。展示自体の構成力とバランス感覚が抜群なので、ひと通り巡れば、「西洋美術とはこういうものだ」というまとまった知見がきっと得られる。

 ひとときも早く、すこしでも多くの人が、この壮大なアート体験に身を浸せる日を待ち望むばかりだ。

 

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