マスクの着用は「義務」と語るカンパナ氏
「現在ロンバルディア州では、マスクの着用が『義務付けられて』いるんです。確かにイタリア人はマスクと無縁の生活をしてきたんですが、感染への恐怖から一斉にするようになりました。それはもはや、非日常の光景。非日常なんだから、手袋まですることにも抵抗がないんです。
日本は冬や春にマスクをするのが以前から当たり前になっている分、みんなが〈いつもよりちょっと気をつけようか〉といった程度の雰囲気に留まってしまっているんじゃないでしょうか。手袋まですることには恥ずかしさを感じるかもしれません。でも周囲から完全に浮いてしまおうと、神経質すぎると囁かれようと、自分の身は自分で守らないと。そして一度外出に使った手袋は、帰宅したらすっぱり捨てる。うちのオカンは古い人間なので、もったいないからとまた使おうとするんですが、それじゃ意味がない!」
手袋と同じ理由で、外出時の彼は帽子またはフードつきの上着、そしてサングラスまで着用するという。
「2月にイタリアへ帰った当初、手袋まではしませんでしたが、用心のためにマスク、帽子、サングラスでスーパーに買い物に行ったら、『何、あれ?』って客の子供たちに笑われたんです。でも今、同じスーパーでみんなが似たようなかっこうをしてますよ」
アニメがきっかけで来日したカンパナ氏
カンパナ氏は少年時代に母国で観ていた「グレートマジンガー」「宇宙海賊キャプテンハーロック」「野球狂の詩」「めぞん一刻」といったテレビアニメがきっかけで日本に興味を持ち、1997年に来日。関西大学に入学して博士課程の取得まで在籍(博士論文のテーマは「新井白石:外国人との出会いとその思想営為」)し、今年で日本在住24年目。現在は非常勤講師として、関西大学で「日本の文化と人間について考える」、阪南大学で「ヨーロッパの世界遺産」「世界遺産論」といった講義を行っている。
彼は2月末にミラノの実家へ里帰りしたのだが、直後にロンバルディア州で新型コロナウイルスのパンデミックが起こり、同州はロックダウン。さらにイタリア全土へと制限規模が拡大したため、本来なら3月26日に大阪へ戻っているはずが、故郷の町で今も足止めを食らっているのだ。
では、2番目にハンドクリームを挙げた理由は何なのか。
「こちらでも帰宅時の手洗いが励行されているんですが、イタリアの水道水はミネラル分が多い硬水なので、頻繁に手洗いをしているとすぐに肌が荒れ、出血までしてしまうんです。軟水の日本はそこまでではないでしょうけど、石鹸を使った入念な手洗いを続けているとやっぱり肌がカサカサになりますので、あった方がいいと思います」