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新型コロナとの共通点は? コレラ、梅毒、スペイン風邪……磯田道史が語る「日本史を動かした感染症」

鎖国中は長崎が「感染症の玄関口」になった

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〈今回の新型コロナウイルスは、流行のスピードがあまりに速く、日々刻々と事態が変わります。しかしだからこそ、新事態から、一歩引いて、「文明の歴史」といった視点から物事を大観する必要もあります。

 私自身、国内の感染症の古文書をみてきましたが、今回、参考になるのは、恩師の故・速水融(『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』)と、石弘之氏(『感染症の世界史』)の本です。石氏は私の義理の伯父で、アフリカ等の感染症事情にも詳しい人です〉

 こう語るのは、テレビでもお馴染みの歴史家、磯田道史氏だ。

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「コロナウイルスの歴史」は牧畜とともに始まった

 二人の師と先達に倣い、「感染症の歴史」に重きを置いてきた磯田氏は、今回の「未知のウイルス」に対するのにも「歴史」が大いに役立つという。

〈新しい感染症は人類を何度も襲ってきました。「歴史」を参照すれば、教訓が得られ、取るべき対策の知恵も出るかもしれません〉

磯田道史氏

 そもそも「コロナウイルスの歴史」はいつ始まったのか。

〈石弘之氏によれば、6つのウイルスの遺伝子を解析すると、ヒト型コロナウイルスが初めて出現したのは、およそ紀元前8000年頃という説が有力です。

 その時代、何が起きたのか。「農耕革命」と「定住化」が起こり、西アジアで、羊、山羊、豚の「飼育」が始まりました。つまり、「ヒトと動物との濃密な接触」から出現したウイルスで、この感染症は、「牧畜」の開始とともに始まったのです〉