「休園」という言葉をきつく感じてしまう
――自治体によって判断が分かれました。どのような対応がベストだったと考えますか。
山本 「休園」では保育を必要とする人たちが保育を受けられないケースが増え、「登園自粛」では仕事を休めない家庭が出てきてしまう。どちらにしても苦しい状況が生まれるのは間違いないと思います。
いち早く一斉休園を決めた渋谷区の保育園利用者と話をしましたが、「休園となった以上、保育が必要だと思っても、自分だけ特別扱いしてもらうようでお願いするのを躊躇してしまう」といった声や、保育園に通わせたことで周囲の保護者から「休園なのになんであそこの家はいいの?」という不満を抱かれるのではないかと不安がる声がありました。
あと、家族に障害や病気のある方は少なくありません。ご両親が障害を持っている、お子さんに発達障害がある、もしくは保護者のどちらかが精神疾患で病気療養中というケースもあります。そういったケアが必要な家庭が、保育園という場所に依存している部分はかなりのウェイトを占めます。「休園」という言葉をきつく感じてしまい、本当に保育を必要とする方が声を上げられなくなってしまうのは問題だと思います。
自治体には「保育園の中が危険」だと打ち出してほしい
山本 保育を必要とする理由は「就労」だけではありません。いろんなことが重なり、家庭の事情は本当にそれぞれだろうという風に思います。こういった未曾有の事態を自分たちの力だけで乗り越えていけるご家庭もあれば、なかなかそうはいかない家もある。当園は、保育の力が必要な家庭には極力寄り添っていきたいと思います。
その上で、各自治体にはもっと「保育園の中が危険」だということを打ち出してほしいです。
国も都も、「保育所は感染症対策を万全にした上で保育を必要とする人を受け入れます」と言いますけど、現場からすれば「万全になんかできるか!」という話です。
当園では「うちは危ないです」と、保育園という環境の危険性について全面的にお伝えし、それを踏まえた上で利用者の方はご判断くださいと話しています。今日も急遽保育をお願いされたのですが、「すいません、安心してお預けくださいと言えない環境ですが」と、実情を理解していただいた上で引き受けました。