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保育園もまったく一枚岩ではない

――それでも、山本さんのように「できるなら一斉休園したくない」のが保育園の本音でしょうか。

山本 そこもすごく意見が分かれていて、まったく一枚岩ではありません。普段からぎりぎりの職員数で運営している園では、休園になると子どもを預けている保育士が出勤できなくなるので困る、という話も聞きます。また、保護者に自粛のお願いを強くできなかったり理解を得られなかったりして、登園数が全然減らない保育園は、自分たちではコントロール不可能なので自治体に休園策を取ってほしいという声もあります。「福祉うんぬんではなく命の問題」ということで、休園を主張する園もある。

 同じ区内の園長同士で話しても、意見はまとまらずバラバラです。ただありがたいことと言いますか、意見は違っても批判や非難は出てこないんです。お前は間違っているなんてことは全然なくて、「何が正解かはわかんないよね。たぶん、誰も間違っちゃいないんだろうけどね」と話しています。

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※写真はイメージです ©︎iStock.com

 自治体の要請にかかわらず、事業者の判断で休園することは、法律的には可能です。ただ休園した結果生じた損害などはすべて事業者がかぶらなければいけないので、自分たちのところだけでは抱えきれず、独自の判断には踏み切れない、というところがほとんどではないかと思います。

オンライン懇親会で情報交換

――在宅で子どもを見ながら仕事をしなければいけない家庭も多いですが、感染の懸念から、祖父母や知人を頼ることができません。心身が疲弊する可能性が高いと思いますが、どこに助けを求めればいいでしょう。

山本 私が今、本当に心配しているのはそこです。不安定な社会情勢の中、先行きも見えず、答えのない不安感が高まっていく中、そういった事情を考慮してくれない子どもが四六時中そばにいて、仕事もしなければならない。これは本当に苦しい状況だと思うので、今回の登園自粛にしても一斉休園にしてもですが、「テレワークができる人=登園自粛」などと、安易に一律のお願いを出してほしくないと思っています。在宅でできる仕事であっても、子どもがいてできる仕事かどうかはまた別の話です。

 うちでもそこにアプローチできないかと考えて、Zoomを使ったオンライン懇親会をはじめました。紙芝居や歌を提供しているオンライン保育もありますが、当園の場合はどちらかというと、情報交換会です。

※写真はイメージです ©︎iStock.com

「大変なのはうちだけじゃないとわかって安心した」という感想をいただいたり、オンライン懇親会を機に個別に連絡をとってみたという方もいました。親同士の横のつながりを橋渡しする役目を保育園が担って、少しでも各家庭の苦しさが軽減されればと思います。