新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言の発令により、多くの保育園が休園や登園自粛の措置を取っている。しかしその対応は自治体によって異なり、自粛の呼びかけにも強弱が見られるようだ。
「3密」を避けられない現場に不安を覚える保育士や、「休園にしてくれないと会社を休めない」と訴える保護者から一斉休園を望む声が上がる中、一貫して「休園反対」を訴えるのが、わかたけかなえ保育園(東京都板橋区)の山本慎介園長だ。リスクを背負って開園を続ける真意を聞いた。
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「休園ではなく自粛の方がいいと考えています」
――「一斉休園」に反対されている理由を教えてください。
自治体による保育所の一斉休園。
— わかたけかなえ保育園(園長) (@wakatakekanae) April 7, 2020
「諦めがつく」「判断に迷わなくていい」といった歓迎の向きもありますが、個人的には反対。
「保育を必要とする」を提供側が一律に線引きすることの怖さ、慣れない拠点保育所に送られる乳幼児の心身の負担など、感染予防と天秤にかけることができないでいます。
山本慎介園長(以下、山本) 休園の場合、「園は受け入れません」という拒否が先にきてしまい、「ただし、医療従事者などを除く」という補足が後につきます。でも登園自粛の場合は、「通常通り子どもたちを受け入れます」というスタンスが基本にあり、その上で自粛をお願いするかたちです。
休園であれ登園自粛であれ、「特別に保育を必要とする方は受け入れる」という結果は同じかもしれません。しかし保育所としての基本に立ち返れば、本来、保育を必要とする人が利用できる方があるべき姿だと考えているので、休園ではなく自粛の方がいいと考えています。
――子どもを持つ保育士や、休園にならないと休めない保護者に対してはどんな対応をしていますか。
山本 全国の小中高校が休校となり始めた3月2日から、休校によって仕事が困難になった職員は出勤停止にし、給料も満額保証しています。保育園の登園を自粛する職員も同様です。
登園自粛をお願いしたことで、当園の登園率は現在3割を切りました。これに応じて「3密」を極力避けるために職員数も順次減らしていますが、そのための出勤停止も業務命令のため、当然そこには給料が発生します。正社員以外のパート職員などにも同じ対応を取っています。このような臨時体制でも自治体からは補助金が満額支給されるため、当園だけでなく、他の認可保育園も財源に関しては困らないのではないかと思います。
不安の中で勤務する保育士に対しては、少しでも士気を上げてもらおうと、臨時手当を支給することにしました。これは園によって異なると思います。