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「公開延期も選択肢にあった」 新作をオンライン配信「仮設の映画館」を立ち上げるまで

配給会社「東風」代表・木下繁貴さんインタビュー

「映画の経済」が回り続けるようにしたい

――収入は選択された映画館と製作・配給側に等分される。従来の興行収入の流れと同じ仕組みなんですね。

木下 そうです。映像配信はVimeoというサービスを使うのでプラットフォーム使用料やアメリカへの付加価値税などの、Vimeo側の経費を差し引いた収入を分け合う形になります。コロナが感染拡大している状況下で、クラウドファンディングで1億円を超える寄付金を集めたミニシアター・エイド基金など、映画文化支援の動きが出ていますよね。いろいろな支援の仕方があると思うのですが、私たちの取り組みでは観客、映画館、配給会社、製作者による「映画の経済」がうまく回るようにしたい、たとえこの状況が長引いてしまっても「映画の経済」が回り続けるようにしたいと考えています。

参加劇場の一つ、「シアター・イメージフォーラム」。上映作品によって劇場は異なる。 ©︎Temporary Cinema

――準備をしながら、あらためて映画配給会社の役割について思ったことはありますか?

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木下 映画製作者と映画館の中間に立って、完成した作品を上映してもらうべく劇場に営業をしたり、できるだけたくさんの観客に来ていただくための宣伝をするのが配給会社です。その「中間に立つ」ということが、まさに配給会社の役割なのかなとは思いましたね。「仮設の映画館」は、たとえば一つの映画館が主導してやろうとしても簡単にできることではありません。同じく、製作者側が単独でやろうとしても限界があるでしょう。私たちで言うならば、全国のミニシアターと多様なドキュメンタリー製作者をつなぐ役割であるからこそ、短期間に「仮設の映画館」を立ち上げることができたんだと思います。

――初めは『精神0』を上映するための「仮設の映画館」でしたが、日を重ねるごとに参加する配給会社が増え、ここで公開される作品も増えていますね。

木下 一作品だけ公開しても、全国の映画館に対しては「焼け石に水」。言葉は悪いですけどね(笑)。ですから、想田監督と一緒に、作品数を増やさないとね、と話してはいたんです。本来であれば、私たちが外に出て営業をかけなければならない。でも今回は、映画館側が共感してくれて、次々と私たちに配給会社を紹介してくれるんです。配給会社どうしって、意外と横のつながりがないもんですから(笑)、資料を作って、私たちこういうことを始めようとしていて……って相談するのはちょっと新鮮でしたね。

――オリジナルのマナーCMも完成して、まさに新しい映画館ができあがっていくようなプロセスですね。

「仮設の映画館」オリジナルのマナーCM

 

木下 本当なら出かけていくはずの映画館と同じように、上映が始まる前のワクワク感を出したい思いがありました。ですからCMの途中には参加映画館それぞれのスクリーンの写真がちりばめられているんです。製作はうちがいつも予告編やチラシ、ポスターを依頼しているレスタフィルムズ。Zoomミーティングで議論しながら作ってくれました。