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 杉並区は4月に入ってから保健所の職員数を増強し、担当課の計71人に加えて、52人を配属したが、それでも要員は厳しい状態だという。

 田中区長は「これまでの感染症対策の想定では、新型コロナウイルスに対処できていません。ならば、ホテル収容を入院措置と同じ扱いにするなどして、現場が動けるように法律を柔軟に解釈するか、法改正をしてほしい。今のままでは保健所が疲弊するばかりです」と訴えている。

PCR検査なしでも「治癒」扱いに

 自宅療養にはさらに問題がある。PCR検査をしなくても、陽性確認から2週間経過すれば「治癒」とされるのだ。

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 入院者は、検査で2回連続して陰性が確認されないと退院はできない。しかし、厚労省は「事務連絡」で、宿泊療養者や自宅療養者らに検査を行うことで重症者の医療に支障が生じる恐れがある場合には、「療養」の開始から2週間で解除することができるとした。これに則り、自宅療養者は2週間で自動的に治癒の扱いになっている。

「TOKYO2020」と書いた五輪の垂れ幕がまだかかっている(杉並区)

 だが、田中区長は「病床が足りないから自宅療養にしているだけなのに、検査に差をつけるのはおかしい。本当は陰性になっていないにもかかわらず、治ったと思い込んで歩き回ると、感染を広めてしまわないとも限りません。また、ウイルスについては専門家もまだ分からないところが多いとされています。だったら余計に病院と同じく2回陰性になってから療養解除にすべきではないでしょうか」と話す。

杉並区が定めた“独自ルール”

 このため杉並区では、2週間の療養で自動的に解除となる国や都の基準とは別に、連続2回の検査で陰性とならない限り療養解除としない独自ルールを定めた。

 4月27日時点で32人の自宅療養者がいると前述したが、これは国や都の基準による療養者だ。別に2回連続陰性という杉並方式の基準をクリアできていない患者が17人いて、同日時点の区内の自宅療養者は計49人だった。

ケヤキ並木のある中杉通り。車は一定の通行量がある(杉並区、4月28日撮影)

 こうした対応は患者のためにもなるはずだ。「安心できるという声があるほか、検査で陰性になったという証明書がなければ復帰させない会社もあるようです」と区職員は語る。

「現状の自宅療養では、一番大事な感染者の受け皿づくりだけでなく、感染拡大の抑止策としても不十分です。社会全体が外出や営業の自粛などで耐えている今だからこそ、感染者対策をきちんとしなければならないのではないでしょうか」と田中区長は危機感を募らせている。

撮影=葉上太郎