韓国プロ野球が5月5日に無観客で開幕する。一時は新型コロナウイルスの感染拡大が進み、窮地に立った韓国。しかし、徹底した検査、隔離、治療を続け、収束に向かった。サムスンライオンズ2軍監督の落合英二氏に経緯と現状を聞いた。果たして、日本プロ野球にも球春は訪れるのか。
「開幕日が決まり、やっとコロナが落ち着いたことを実感します。飲食店もスーパーも普通に営業していますし、利用者も多い。日常生活が戻りました。KBO(韓国野球委員会)は5月1日に開幕したかったのですが、慎重な国側が5月5日にしてくれと。ようやくこぎつけたという感じですね」。
韓国で初の感染者が出たのは1月だった。
「これは危険だという雰囲気になったのは2月10日前後でした。ただ、その頃はまだ検温もなく、2軍は慶山、1軍は沖縄でキャンプをしていたんです」と振り返る。その後、大邱で宗教団体の集団感染が発生した。「ベッドがなくて、入院できない人もたくさん出ました。すると、新人選手の親御さんから『練習している場合じゃない』と球団に連絡があり、3日間の活動休止になったんです」。
「ウイルスとの戦争に突入した」韓国の厳しい対策
2月29日には1日の感染者が最多の909人になり、政府は3月1日に方針を転換した。感染者を全て入院させるのではなく、軽症者を病院とは別の「生活治療センター」に収容することにしたのだ。サムスンやLGなどが施設を提供したり、公共施設を改装したりした。
「街のサウナを利用したとも聞きました。医療崩壊したという記憶はないですね」と落合氏。文在寅大統領はさらに手綱を締め、3月3日には「ウイルスとの戦争に突入した」と宣言。「3月7日か8日までに(韓国に)帰国しないと、2週間の自宅待機になりました。航空路線の封鎖も決まり、飛行機がなくなるということで、1軍は慌てて沖縄キャンプを打ち切ったんです。それでもすぐに直行便が取れず、沖縄から福岡経由で釜山に帰る組と宮崎経由で仁川に帰る組に分かれました」。
国内には一気に緊張感が漂い、報道の内容も様変わりした。
「ずっとニュースです。感染者、死亡者、検査数ばかり。バラエティ番組は放送されていなかったと思います。街から人も車も消えました。法律は詳しく分かりませんが、日本のようなお願いではなく、命令に近かったですし、国民もそれに従いました。2軍の選手を褒めましたよ。一番危険な場所にいたのに本人も家族も全く感染しなかったわけですから」
韓国はPCR検査を拡充した。保健所に加え、ドライブスルー検査やウォーキングスルー検査を実施。感染が疑われるケースは無料。結果も1日から2日で分かる。
「感染の疑いがなくても、16万ウォン(約1万4千円)を払えば、誰でも検査が受けられます。しかも、それで陽性なら、国がお金を払い戻してくれるし、治療費もタダ。とにかく検査が早いし、多い。今も球場に入る時は警備員が検温して、37.5度以上だと立ち入り禁止で即検査。その後、結果が出るまで自宅待機というのがルールです」