1ページ目から読む
3/3ページ目

「(その日)殿下に『本当に私でよろしいでしょうか』というふうにうかがいました。『はい、そうです』とお答えくださいましたので、少し長くなりますけれど、私のほうから次のように申しました。『私がもし殿下のお力になれるのであれば、謹んでお受けしたいと存じます。これまで、殿下には、いろいろたいへん幸せに思えること、嬉しいと思えるようなことも言っていただきましたので、その殿下のお言葉を信じて、これから二人でやっていけたらと思います。お受けいたします限りは、殿下にお幸せになっていただけるように、そして、私自身も自分でいい人生だったと振り返られるような人生にできるように努力したいと思いますので、至らないところも多いと思いますが、どうぞ宜しくお願いいたします』このように申し上げました」

東宮仮御所での婚約内定記者会見

 記者は「プロポーズをいったん固辞されたとのことですが、葛藤はどのようなものだったんでしょうか?」と雅子さんに尋ねる。

「私がご辞退申し上げたことがあるかどうかというのは、私の方からはお答えを差し控えたいと思いますが、確かに外務省でたいへんやりがいのある仕事をさせていただいておりましたので、その仕事を辞めるべきかどうかということについて、大分悩んだことはございました」

ADVERTISEMENT

「これまで6年近く勤めておりました外務省を去ることに寂しさを感じないと申しましたら、それはウソになると思います。(中略)今私の果たすべき役割というのは、殿下からのお申し出をお受けして、この皇室という新しい道で自分を役立てることなのではないかと」

「皇室に入られることにはいろいろ不安や心配がおありでしょうけれども、雅子さんのことは僕が一生全力でお守りしますから」

 決心を促した皇太子の力強い言葉を紹介する雅子さんは、本当に幸せそうだった。

黄色のワンピース姿の雅子さまから感じられた「覚悟」

 ──こうして、約20分の「黄色いワンピースの会見」は終わった。会見室を出られて、宮内庁の渡り廊下を歩く雅子さんは緊張が解けて大きなため息をついた。その横で、皇太子は雅子さんの背中にそっと手を添えて労られていた。

記者会見を終え、各宮家へのあいさつ回りに向かうお二人

 ハーバード大卒、東大から外務省の才媛、キャリアウーマンとして、次代の「開かれた皇室」の担い手を雅子さんに期待していた人からは、黄色いワンピースと帽子の「保守性」と、やや背を丸めて緊張した面持ちの雅子さんの様子に、一種の失望の声が上がった。 大きなバッグを持ちトレンチコートでさっそうと前を向いて歩く雅子さんの個性をも封じてしまったかのように見える、「皇室の力」を改めて感じた人もいたかもしれない。

 もっとも、雅子さんの友人によると、ニュアンスは異なる。

「雅子さんは、周囲の状況に合わせるのがとても上手な方なのです。会見を見て、雅子さんらしいと思いました。これまでのキャリアを捨てて、一から皇室で頑張っていきたいという覚悟を感じました」

 周囲に合わせていくのが上手という雅子妃の性格は、今後の「雅子妃物語」の重要なキーポイントになるだろう。