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「今の静かな京都こそ、本来の姿ではないか」マスクも観光業も中国頼みの“グローバル経済”は崩壊した

この20~30年間の方が、実は“非常時”だったのかもしれない

〈今回の新型ウイルスの世界的大流行は、「グローバリズムの完成形」とも言えるでしょう。「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」が国境を越えて急速に移動するのが「グローバリズム」ですが、これに「ウイルス(感染症)」も含まれる、ということです〉

 こう語るのは、以前から「過度なグローバリズム」に警鐘を鳴らしてきた社会思想家で京都大学名誉教授の佐伯啓思氏だ。

〈人類史上、パンデミックは、中世のペスト、大航海時代の新大陸での疫病大流行、第一次世界大戦時のスペイン風邪など、何度もありましたが、今回の場合は、流行拡大のスピードがあまりに速く、世界各国がほぼ同時に同じ問題に直面しました。こんな事態は、この20~30年間のグローバリズムがなければ、あり得なかったことです〉

中国のマスク工場 ©AFLO

“グローバル経済の脆さ”が明らかになった

 佐伯氏によれば、今回の新型ウイルスの大流行は、「グローバリズムのしっぺ返し」だという。

〈今回の新型ウイルスは、「グローバル経済がいかに脆いか」を白日の下に晒しました。これまでグローバリズムを推し進め、妄信してきたことの“しっぺ返し”のようにです。「ウイルス」の蔓延で、「ヒト」と「モノ」の移動がストップし、世界経済は大打撃を被りました。すると株価も大暴落し、「カネ」の流れもストップ。「情報」だけは回り続けていますが、むしろ瞬時に世界を駆けめぐる「情報」が、パニックを増幅させているように見えます〉

佐伯啓思氏

〈考えてみれば、通常の季節性インフルエンザより多少強めのウイルスの出現によって、一気にこれだけの経済的ダメージがくることの方が異常でしょう〉

〈“弱小ウイルス”の一刺しで、現代文明が、砂上の楼閣のように、呆気ないほど脆く自壊しているかのようです〉

工業製品と同じようにウイルスが輸出された

 今回、「グローバリズム」とともに顕在化したのは、「中国への過度な依存」という問題だという。

〈ここ30年来のグローバリズムにおいて、中国は、不可欠な中心的アクターでした。米国、ヨーロッパ、日本のグローバル企業が「(独裁体制で安い労働力の)中国」を“世界の工場”として活用することで初めて、今日のような「グローバル経済」が可能になったからです。中国から発し、日本、ヨーロッパ、そして米国に飛び火したウイルスは、今日のグローバル経済のあり方を象徴しています。「中国産の工業製品」と同じように、「中国発のウイルス」が日米欧に“輸出”されたからです〉