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野村克也夫妻が愛した仙台の寿司屋 親方が語るあの頃といま

文春野球コラム Cリーグ2020

2020/05/07

 先日4月23日に放映されたアメトーーク!『ありがとうノムさん芸人』。出川哲朗、サンドウイッチマン伊達ちゃん他、芸人たちのノムさん愛に溢れる内容の好評回、文春野球を愛読する野球ファンなら視聴した方も多いであろう。その放映時に、MC席前の机に置かれた「生涯一捕手 野村克也」と書かれた額縁を覚えているだろうか?

 額縁の中身は色紙、ではなく実はタオル。とある仙台の寿司屋が、生前サッチーから「ヤフオクで高く売れるわよ」との一言とともに、いただいたノムさんタオルだ。

アメトーークのMC席前の小道具として貸し出されたタオル

「生涯一捕手」の額縁の持ち主は、仙台の野球ファンなら知る寿司屋

 その寿司屋は『笹鮨』。広瀬川流れる岸辺の近く、伊達政宗が創建した大崎八幡宮が鎮座する八幡町。あの東北福祉大も目と鼻の先。大通りから一本はいった閑静な場所にある『笹鮨』は地元のプロ野球ファンには知られた寿司屋だ。

 普通の寿司屋ならおすすめメニューが書かれるはずの店頭の黒板には、“親方の言いたい放題”なる放言が書かれている。過去シーズン中に、黒板に書かれた放言を一つ紹介しよう。

“楽天”が勝つと元気がでる♡
“横浜”が勝つと笑顔が出る。
“阪神”が勝っても元気がでる!!
“巨人”が勝つとテンション下がる。

 野球好きならビンビンきてしまう放言に、おそらく巨人ファン以外なら店内へ吸い込まれてしまうだろう。店内にはいると、イーグルスの選手たちを中心にプロ野球選手のサイン入りバットやボールがズラリ。

 そんな『笹鮨』の親方である大橋幸一さん(69歳)とイーグルスの選手たちの付き合いは、球団創設の2005年までさかのぼる。当時、仙台駅から西公園までを巡る創設記念パレードの日が、はじまりだった。

『笹鮨』親方・大橋幸一さん(69歳)

親方「福盛和男ってわかりますかね? あのスレッジの。あの逆転サヨナラの(笑)。その福盛さんが、そのパレードの日の夜に、球団スタッフを連れてお店に来店してくれたことがきっかけ」

 2009年CS第2ステージ第1戦日ハム戦。野村楽天、事実上の終戦の日となってしまった一戦。あのスレッジのあの逆転サヨナラの、あの福盛をきっかけに、『笹鮨』にはイーグルスの選手たちがしばしば足を運んでくれるようになる。後日談だが、福盛と親方は、ゴルフに一緒に行く昵懇の仲となる。その関係性は、福盛がティーショットを打つ際に、親方が視界でスレッジのマネをするぐらいの深い仲のようだ。

 西谷尚徳、一場靖弘、戸叶尚、枡田慎太郎に嶋基宏、そして山崎武司……当時のイーグルスの主力選手たちが『笹鮨』に足を運ぶようになる。そのなかには、戸叶が紹介してくれたカツノリもいたという。お店を気に入ってくれたカツノリはその後、家族でも『笹鮨』を利用するようになった。

 その日は2007年の3月30日、パ・リーグは試合がないセ・リーグ開幕の日であった。いつものようにカツノリ夫妻が子供を連れてやってきた。いや、いつもとは違い、野村監督とサッチーとともにやってきたのだ。