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建設現場を見守って……ファイターズ新球場という夢の途中

文春野球コラム Cリーグ2020

2020/05/23
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 いま私の生活は建設現場と共にある。まだ土だらけのその現場では、トラックが左から右、右から左にと忙しく、重機が何箇所かに配置されている。吹く風、舞い上がる土埃。手前に見える木々は昨日よりも緑が濃くなっただろうか。

 世の中には数えきれないほどのライブ配信があるが、私はいまはここばかり見ている。建設現場をリアルタイムで眺める。モニターの先は北海道北広島市。建設されているのは北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコン フィールド HOKKAIDO」。

北海道全体のすぐそこにある夢の未来

 北広島市は、明治17年に広島県人によって開拓された土地、なので「北」の「広島」。札幌からはJRで16分、車では30分ほどの距離にある。高速道路で北広島を過ぎればその先には新千歳空港。札幌と千歳のほぼ真ん中に位置していて、アクセスの良さに魅力を感じる人も多く、私の周りの北広島市民の中には札幌から移住した人もいる。人口およそ6万人の街に、3万5000人を収容するスタジアムが出来ることになる。

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 建設現場はJR北広島駅から歩いて20分ほどの36ヘクタールを超える広大な土地。誕生するのはまだ日本では見たことのない大規模なボールパークだ。

 夢、未来という言葉が思い浮かぶけれど、これが3年後に完成すると言われると、何だか気が急いてむずむずしてしまう。開業する2023年はファイターズが北海道のチームになって20年目の節目でもある。エリア全体の名称は「北海道ボールパークFビレッジ」と決まった。間にある「F」は、Fightersはもちろん、Fan(ファン)Future(未来)Forest(森)Fun(楽しい)Fusion(融合)など複数の言葉の頭文字。中心となるスタジアムは開閉式屋根を備えた天然芝となり、日本初である。

 HP(https://www.hkdballpark.com/)で公開されている完成イメージは大人でもわくわくする要素がいっぱいだ。
ショッピングモールやレジャー施設、ホテルも隣接。泊まる部屋の窓から生で試合を見るなんて贅沢もあるのかもしれないし、プールやスパがあればそこからの観戦なんていうVIP体験も出来るのかもしれない。ボールパーク、核になるのはスタジアムだけれど、もうこの場所は野球ファンだけの楽しみを超え、北海道全体のすぐそこにある夢の未来なのだ。

 その夢の未来計画がこのコロナ騒動の中、クールに予定通りに進んでいく様子は、爽快だった。4月13日、大安。建設の無事を祈って起工式が行われ、ファイターズからの出席者の中にはマスク姿の栗山英樹監督、稲葉篤紀SCO、田中賢介SAの姿があった。ただ全体的に見るとこれほど大きな工事が始まるには少ない参加人数で、聞けば三密を避けるためにほとんどの北広島市のボールパークスタッフは別会場でマスクをしながらモニターで式典の様子を見守ったという。

起工式の様子 ©斉藤こずゑ

 神事が終わった後には実際に作られる位置と同じ場所にホームベースとマウンドが配置され、出席者による始球式も行われた。ホームベースには栗山監督、稲葉さん、賢介さんの記念のサインが加えられた。まっさらな場所に書かれたサイン、私たちファンも久しぶりに見るサイン。

ホームベースに書かれた記念のサイン ©斉藤こずゑ
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