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建設現場を見守って……ファイターズ新球場という夢の途中

文春野球コラム Cリーグ2020

2020/05/23
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「頑張った先にはFビレッジがある、誇れるものがある」

 そして、4月28日に予定通り、工事はスタート。時間はある、見に行きたい、でも……という私の気持ちに寄り添ってくれたのが冒頭で触れたライブ配信である。ボールパークのHPをぐぐぐーーっと下にスクロールすると、「LIVE CAMERA 現在の建設現場の様子」という文字が出てくる。迷わずクリックしてください、はい、そこはもうエスコン フィールド HOKKAIDO。

 現場を大写しにしているので、全体の様子がよくわかる。いまはまだ基礎工事の段階なので全体的には土色。そこにトラックが重機がクレーンが配置されて動いている。画面手前にある低い建物は働く皆さんの事務所でしょうか、12時を過ぎると車が集まってくるのでこの中でお昼ご飯でしょうか。行きたい、15時におやつと缶コーヒーを差し入れたい。そのもっと手前には木々があり、一般道があり、線路があり、時間ごとにJRが横切る。空港と札幌駅を結ぶ「快速エアポート」から見えていた建設予定の看板の向こうがこの風景なんだとJRが通るたびに実感。夏には周辺道路やボールパーク内の整備も始まり、秋にはスタジアムの屋根のかかる作業も始まるそうだ。

 以前、埼玉の西武ドームに屋根がかかるのを見に行ったというライオンズファンの話を聞いたことがある。その瞬間にどうしても立ち合いたかった、行かずにいられなかったんだと。わたしたちはそれをこれから体験する。行けなくたって、ライブ配信がある時代。そして、この作業を見守れるのは今だけなのだ。ひとつのチームを追いかける醍醐味に、選手のルーキー時代からを見守るという喜びがある。いま、私がライブ配信を見るのはそれに近い。

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「こんなに立派なスタジアムになったけど、土だけの頃からずっと見てました」
「屋根がかかったあの時は、世の中ではこんなことがあったんです」
「日本初の開閉式天然芝の球場も最初はな~んにもないところからですよ」

 なんて言う日はたった3年後、ルーキーがチームの主軸になるよりも早い。

建設途中のスタジアム ©斉藤こずゑ

 北広島の駅前にある居酒屋「焼鳥キッチンあじと」のオーナー・福田健次さんが言う。地元で愛される人気店で平日でも満席が多いこの店もやはり例外なくコロナ自粛に苦しんだ。「駅前の灯りをいま消してはならないんです、ここには新球場が出来るのだから」。完成する2023年まで踏ん張らないでどうする、その景色をこの店と一緒に見ずにどうする、みんなで声を掛け合って頑張らなきゃいけない。福田さんは少年野球の指導もする、新球場の存在が子供たちにどんな影響があるかも常に考えている。

 そして、私が新球場の取材をする時に全面的に頼りにしている北広島市役所のボールパーク推進室長の川村裕樹さんは言う。「いまの時世、建設に不安を訴える人はいます。私はこう伝えます、いまは大変だけど、夢の構想がいま夢の実現に変化しつつある。頑張った先にはFビレッジがある、誇れるものがある、いまは歩みを止めないで進んでいくんです、と」。

 川村さんは元高校球児、1988年に札幌開成高校から甲子園に出場した経験を持つ。野球愛ももちろんだけれど、憧れの場所がどれほどモチベーションをあげてくれるのかもよく知っている人だ。エスコン フィールド HOKKAIDOが、北海道ボールパークFビレッジが世代に関係なくその存在になるのは間違いない。

 パソコンを立ち上げて、今日も私は建設現場への窓を開く。3年後の自分に笑われないように、こちらもしっかりと毎日を積み重ねよう。

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