ところで当然のことながら、動物たちの世話はテレワークというわけにはいかず、飼育員は休園中も基本的には開園時と同じ仕事をしている。長い休園で、何か変わったことはあったのだろうか。
「掃除は“し放題”ですね(笑)。お客さんがいる前では、なかなか掃除できない場所も今ならいつでもできます。動物たちの様子をみるにしても、普段はお客さんの後ろからそっと見るんですけど、こうやって堂々と最前列で観察できます。……でも、今の時期しか見られない動物たちの姿もあるから、やっぱりお客さんに見てほしいですね」(同前)
チンパンジーは「ドン!」とガラスを叩いた
最後に訪れたのは、加藤園長が「園内の見回りの最後は、だいたい、いつもここなんです」というチンパンジー館だ。
チンパンジーの部屋に入った途端、それまでエサを食べていた群れは、一斉に声をあげて、ちょっとした興奮状態になった。中にはガラスに向かって突進してきて、ガラスを「ドン!」と叩いて、ほかのチンパンジーに「やめろ!」とばかりたしなめられるのもいる。だがほどなく興奮は収まり、やがて、1匹のチンパンジーがガラスによってきた。最年長の「ガチャ(♀・推定54歳)」だ。ガラス越しに手を伸ばすと、その手に合わせるようにチンパンジーも手を差し出す。まるで「こっちは大丈夫だよ」とでも言うように。
一方で、類人猿館では、2月に4年ぶり3回目となる出産をしたボルネオオランウータンの「レンボー(♀・12歳)」が、この休園期間中、育児に余念がないという。
「休園が始まった最初の頃は、わりと落ち着いていたんですけど、長引くにつれて、ちょっと時間をもてあますような感じもありました。でも今は、こうなったら子育てに集中しよう、という感じで切り替えてますね」
そう語るのは、飼育員の李さんだ。