敗れた後に見せた姿
バッティングは本当に柔らかい。クセがない。よく清原和博、松井秀喜の高校時代と比較する向きがあるけれど、それは答えがないのだ。清宮はそのクラスの物語をつくれていない。清原の「甲子園通算ホームラン数13」にも及ばないし、松井の「5打席連続敬遠」の凄みもない。履正社の安田尚憲とのライバル関係をメディアは書き立てるが、それもまだ前哨戦止まりだ。見た人があれは凄かったと後々まで語り草にするような名勝負、名場面の類いをまだつくれていない。「高校通算107号」の額面だけがあって、それだけ打ってるなら凄いんだろうと納得している。だから皆、本当に凄いのか甲子園で清宮が見たい。
だけど、試合が始まって、しっかりした野球をやってるのは東海大菅生のほうだった。早実は守備が粗かった。これは負けるだろうと思う。ミスにつけ込まれて失点を重ねる。打つほうでは清宮の前で終了して、次の回の先頭打者にされてしまう。東海大菅生、理に適っている。甲子園出場は順当だと思った。2年前、決勝で涙をのんだことで、この一戦にかける思いが強かったのだろう。
つまり、圧倒的なポテンシャルを感じさせ、キャラ立ちした「超高校級」は、高3の夏、甲子園へ届かなかった。見るはずだった名勝負は消えてしまった。メディアはアテが外れた。例えば早実の先輩、斎藤佑樹のような空前の大フィーバーにはなりそこなった。ニュアンスは花巻東時代の大谷翔平に近い。甲子園出場経験はあるものの、いちばん迫力ある姿は見せられなかった。
僕は敗者・清宮幸太郎の姿をずっと目で追った。グッドルーザーだった。勝った東海大菅生を称え、仲間に声をかけていた。スタンド応援席に心のこもった一礼をした。もっと姿が崩れるかと思ったが、こらえていた。僕はその自制する姿こそが買いだと思った。この選手はマスコミに持ち上げられ、チヤホヤされてるだけじゃない。自分を持っている。敗れたときもそれを失わない。そして、深く傷ついている。でっかい夢が消えたんだ。結論を言おう。ファイターズの次代を託すのはこの男だ。
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