私にとって絵は人生
近藤は近年、最愛の夫を亡くし、そのすぐあとに息子を出産するという経験をした。日常が劇的に変化し、近藤自身の人生観も180度変わった。作品への向かい方も以前と異なってきた。
「私にとって絵は人生です。夫の死と、子供の誕生は天と地ほど違い、肉体と精神が引き裂かれるほどの衝撃的な出来事でした。子供が生まれてくるまでの間、ショックであまり記憶がないのですが、生まれてこようとする力強い生命に励まされ、なんとか生きるために絵を描く日々でした。
描くことで傷つき、描くことで救われる。辛い時期を乗り切る勇気が、私にとっては絵を描くことでした。絵は心とは裏腹に残酷にも美しく、それは生きるということそのもので、一筆一筆絵の具を置くように、今は生きているという感謝と喜びを確かめながら、ゆっくり大切に描いています。生きることは絵を描くこと。絵は光です」
夫とは記憶や思い出でつながりつつ、子育てをしながらキャンバスに向かう。そこから生まれてくる絵は、いまの近藤亜樹だからこそ描ける表現であるに違いない。
この時世でリアルな展示の場が失われるなか、近藤亜樹作品は現在、所属ギャラリーのシュウゴアーツによって、ウェブ上の展示として観られるようになっている。近藤亜樹オンラインショー「心に花を」。
人はずっと昔から、いつだって心を豊かにするものに触れることで、今を生きて未来をつくってきた。現在のようなときこそ、心の栄養をたくさん取ろう、その一助になればという近藤の思いが、ギャラリーによってかたちを与えられた。
開催に寄せて、近藤は言う。
「今こそ想像力を育て、心に花を咲かせてください」