もっとも人々の警戒感はまだ高いままだ。道行く人々はまだマスクをつけているし、レストランも前ほどのにぎわいはない。大学もまだオンライン授業だ。上海市では4月27日に受験をひかえる中学3年生、高校3年生の授業が再開された。人々の警戒感は強く、規制は段階的に解除されていく。
3869人の死者が出た武漢「日常生活に不自由はないが……」
北京市や上海市だけでない。新型肺炎の震源地・湖北省でも状況は変わり、人々は省外に出られるようになった。武漢市でネイルサロン、ネイル関連のネットショップを経営する張さん(26歳、女性)は「つい先日、浙江省に仕入れに行きました。完全に自由ではなくて、現地でPCR検査を受ける必要があります。結果がでるまでは待機施設で待つことになりますが、まあ仕方ないですね」と話す。
ちなみに3869人もの死者が出た武漢市だが、自由に出歩けるようになり、日常生活にはさほど不自由は感じないという。問題はビジネスだ。人々の恐怖心は強く、繁華街に人が戻らない。「私のネイルサロンも商売あがったりです。まあ、少なくとも今年いっぱいは厳しい状況だとあきらめています。ネットショップは好調なんですけど、武漢市から出荷された商品だと売れないですよね。なので倉庫を浙江省に移したんです」
規制は徐々にゆるまりつつあるが、人々の恐怖心は消えていない。また流行再発のきざしがあれば、規制は機敏に強化される。前述した1級、2級の緊急対応レベルは省、直轄市、自治区レベルのものだが、さらに市や区、県レベルの狭い範囲で低中高の3段階のリスク評価が実施されている。広東省では海外からの感染例が見つかったとして、一部地域でリスク評価が「低」から「中」に引き上げられた。北京市朝陽区では留学帰りの学生とその家族3人の感染が見つかったとして、一気に「低」から「高」へと引き上げられた。クラスター感染があった場合には即座に高リスク評価を受けるというルールに従った対応だ。
なぜか明るさを感じる中国
ニュースを見ていると、元の日常に戻ったかに見える中国だが、人々の警戒心の高さや段階的な規制解除が行われている点を考えると、いつもどおりとはまだまだ言いがたい。中国政府は「常態化した疫病抑止」に取り組むよう、呼びかけている。いわば中国版の「新しい生活様式」だ。
その意味では1カ月後の日本も似たようなものなのかもしれないが、悲壮感漂う日本と比べると、中国のほうがなにか明るさを感じるのはなぜだろうか? 前述、上海の服部さんはこう語った。
「日本人も中国人も今後どうなるのか、はっきりした答えが欲しいのは同じだと思います。もし中国人が日本ほど苦しんでないように見えるとしたら、それは普段からドタバタに慣れているからというのはあるかもしれないですね。大学の面接でも3日後にやりますといきなり発表されて、学生が慌てて飛んで帰ってくるとかざらにありますから。普段から突発事態に振りまわされるのに慣れているのかもしれませんね」