まるで政府の肩代わりをするような話だが、警察幹部は次のように解説する。
「暴力団対策法の影響などもあって、いまは暴力団に対する締め付けが厳しい。過去にあったような“街の顔役”としての立場を保つことは難しく、『ヤクザはすごい』と思わせる場面は少ない。そういった意味で、マスクの無料配布は、絶好の“顔を売る”機会だったのだろう。
とはいえ“タダより高いものはない”とも言うように、暴力団側が無料で配る背景には、『後々困った場面で自分たちも助けてもらおう』という気持ちはあるはず。彼らの言うような、人助けの気持ちがないとは言わないが……」
苦境が続く夜の街。ビルオーナーも厳しい
マスクを大盤振る舞いする陰で、夜の街をシノギにしている暴力団の現状は厳しい。東京に本拠を置く、ある暴力団幹部が語る。
「税金も払っていないにも関わらず、何を勝手なことを言っていると思われるかもしれないが、夜の街のことは誰よりも詳しいつもり。その目で見ると、いま夜の街は本当に困っている人がたくさんいる。国には、もっと迅速に助けてあげてほしい。
特に営業自粛している飲食店経営者は家賃が払えない。事業者支援と言っても100万円ほどでは話にもならない。新宿や銀座、六本木の飲食店を経営している知人のうち、何人かはビルのオーナーから家賃は最大3カ月待つと言われている人もいる。しかし、支払いが後回しになるだけ。免除ではない」
苦境が続いているのは、飲食店経営者だけではないという。
「ビルのオーナーも苦しい。銀行から融資を受けてビルを建てたオーナーには融資の返済がある。テナントの飲食店が家賃を払えなかったら、オーナーも銀行に返済できない。どこかで資金がショートしたら、玉突き、連鎖的に破綻が連なる」(同前)