「つけ回し」を任せられるように
レインが次にまかされたのは“つけ回し”という仕事だった。
「お客さんに女の子をつける、キャバクラで一番大事な仕事があるんですけど、そこまでやらせてもらったんですね。店の売り上げ左右するのは、つけ回しの人ですよ。うちのお店、小っちゃかったんで、全部1人でやってました。まずお客さん入ってきたら、連れてきた人が案内して、あとは全部わたし、伝票もわたし、ウェイターもわたし」
以前、私はキャバクラの裏側を取材したことがあった。
いかに客の財布を開かせるのか、キャバクラ側の手法を聞きだしたものだ。
そのなかで今回レインがうち明けたつけ回し、という役目はきわめて重要で、席についた客にキャバクラ嬢を横に座らせる任務をになっている。横に付いたキャバクラ嬢にあまり乗り気でない様子なら、次に真逆のタイプをつかせる。何回かチェンジしてみて、客の反応を見抜いて、隣につかせるのだ。うまくいけば客が延長してくれる。その分、店への支払いが増える。いかに延長させるかが、つけ回しの腕の見せ所だ。
「言葉ですね大事なのは」
「レインさんが体験的に学んだ、つけ回しするポイントっていうのは?」
「15分で1人、また15分で1人って女の子をつけるんですけど、このお客さんは長い髪の子が好きだな、とか、顔見てなんとなくこういう子、好きそうだなって判断して席につかせるんですね。ポイントで言うと、違う性格の子と違うスタイルの子を交互につけます。おとなしい子の次はおしゃべりな子とか。痩せた子の次はグラマーな子とか。
力のある子(指名上位)は最後につけて、だいたいそれで延長取れたりしますね。たまに最初に力のある子をつけて、もうそのまま指名とらせて、延長取らせるやり方もあります。年配の方には、ちょっと年配の女の子をつけてみたり。この人はギャル系がいいかなとか、見ればわかります」
「じゃあ、私が客だとしたら、どんな子を?」
「おとなしそうな子をつけるかもしれないです」
「そう?」
「とりあえず、最初にはサラッとはじまって、ちょっとよくしゃべる子をつけてみたりとか。いきなりうるさかったら、ちょっと引きそうとか」
まあそんな感じで私はつけ回しから見られているのだろう。
「お店でトラブったこと、よくありますよ、お酒飲んでるんで。あと、“安くしろ”とか。延長取りの仕事もあるんですよ。本当は、ウェイターさんに行かせるんですけど、それもポイントがあって、よくしゃべるウェイターさんがいいですね。“延長いかがですか”じゃなくて、そのお客さんと仲良くして、“そろそろ時間ですけど”って、“延長します? 延長しますよね?”みたいな。ウェイターさんもちょっと軽い子に行かせるんです。やっぱりしゃべり上手なほうが延長取れるんですよ。言葉ですね大事なのは。そういう仕事も好きでした」