新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、多くの学校が「休校」を余儀なくされている。3か月近く「休校」が続いている学校もあり、学習の遅れや学力格差の拡大を懸念する声も出ている。

「こんなときこそ普段できないことをしてほしい」

 そう話すのは、麻布中学校・高等学校の平秀明校長だ。麻布中学校・高等学校は「開成」「武蔵」と並び、私立中高一貫校の「男子御三家」と呼ばれる超名門校。2019年の東京大学合格者数は100名で全国3位。東大への合格者数全国ベストテン入りを半世紀以上キープしている。同校は自由な校風でも知られ、勉学においても諸活動においても生徒の自主性を尊重する教育方針が徹底されている。平氏は発売中の「文藝春秋」6月号で休校中の麻布の取り組みと「この時間をどう過ごすべきか」について語った。

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平秀明校長

「全部やりきれるのかな」と思うぐらいの課題

「4月7日から新学期スタートの予定だったのですが、休校延長です。生徒にただ自宅待機させておくわけにもいかないので、今は各教科担当者が学習指導という形で生徒に課題を与えています。例えば、中学3年の数学ではこれまでに学んだ単元に即した課題やプリント問題を郵送したり、ホームページにアップしたりするなどし、期日までに解いて提出するように伝えています。

 本校は私立学校で安くはない授業料をいただいていますし、それに教員も家で手持無沙汰でいるよりは、なんらかの形で生徒とつながっていたほうがいい。生徒に元気を与えるだけではなく、教員自身も生徒から元気をもらうことにもなるのです。

『課題』は単純にドリル問題を解くようなものばかりではありません。私も確認しましたが、ひとつひとつ非常によく考えられていて、正直これを全部やりきれるのかなと思うぐらいです。実技教科である音楽は、課題の設定に苦労するなと思いましたが『音楽作品や舞台芸術作品をテレビやCDなどで視聴して、いくつかの作品についてレビューを書け』など、自宅でできる課題が出ていまして、そういうやり方があったのかと感心しました。

英語の授業

 もともと本校の授業はアクティブラーニングの形態をとっており、教員も、ただ教科書の内容を伝えるのではなく、自分たちで作ったオリジナルプリントなどを使って、いかに生徒に興味関心を持たせるか、工夫して授業を進めています。ですから今回出された学習課題も、非常に考えさせる、面白い視点のものが多くありました。

親が使っているから子供はパソコンを使えない

 またオンライン授業についても試みている教員もいるのですが、いろいろと課題が多いことがわかりました。必ずしもすべての家庭にオンライン授業に適した機材が揃っているわけではありません。また、家に一台しかないパソコンは、親がテレワークで使っているから使えないとか、さまざまなボトルネックがあることもわかりました。

 学校によってはオンライン朝礼や終礼などを決まった時間にやっているところもあるようですが、生徒それぞれの家庭の事情や生活条件は違うのだから、麻布ではそこまでやる必要はないと思っています」