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今の社会に「俺コロナ」の虚言を受け止める余裕はない

 本件に少し性質が近いのが、「インターネット上での爆破予告」あるいは「殺害予告」です。爆弾に関してはテロが頻発する時代を迎え、過去「いたずら」で済んでいた事案も犯罪として即座に厳しく対応される傾向が強まっています。

 インターネット上の暴力的な書き込みの相当数を捜査機関が「その気になれば」犯罪として扱えること、多くのケースで被告人が捜査対象になって初めて事態の深刻さに気付き「こんな大事になると思わなかった」と反省している点も「俺コロナ」と共通しています。

 最も大きい共通点は、発言者の考える「冗談」「悪口」と、受け取り手の考える「冗談」「悪口」に違いがあり、コミュニケーションが成立していない点にあります。

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 世界でコロナウイルスが猛威をふるう状況下、生命と生活に関わる虚言を「悪質ないたずら」「趣味の悪い冗談」として受け止める余裕は今の社会にはありません。

「俺コロナ」は、インターネットすら介していない、まさしく目の前にいる生身の人間、いのちと健康、生活について不安と恐怖を感じる他者への想像力が欠けている事案です。このコミュニケーションの欠落は、息詰まる現状で精神的なストレスを抱え、他者を思いやり、また自分の行動がどういった結果を招くかについての想像力が失われてしまっていることによるのかもしれません。

©︎時事通信社

 こんな時こそ、より一層他者の気持ち、他者の受け取り方について配慮が必要になります。私も、後見制度などに無理解な銀行の窓口担当者に大変なストレスを感じることがままあります。イラッとして何か言いたくなる気持ちは分かるけれど、今ストレスが溜まっているのはあなただけじゃないし、言われる人は辛くて怖いんだよ、というごく当たり前の話を振り返るべき時期かもしれません