愛知県を中心に「自分はコロナウイルスに罹患している」という内容をお店や行政機関等で発言し、消毒などで施設が休業に追い込まれるなどの損害が発生し、刑事・民事上の責任を問われる、といった事案が相次いでいる。本人は軽い冗談のつもりだったのに、全国ニュースの大騒動へと発展したケースも少なくない。「俺コロナ」おじさんの冗談は、法的に認められるのだろうか。リスクマネジメントに詳しい田畑淳弁護士に聞いた。

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「俺コロナ」で賠償金83万円!

 最近、「俺コロナ」と銀行窓口で発言した男性が威力業務妨害罪で起訴され、お店の賠償金83万円と保釈金150万円を負担することになった、といった内容がSNS上に流布されて、話題になりました。

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 この男性は「俺コロナ」は、あくまで「冗談」だったと主張しており、いつも行く店舗だったから店舗側には理解してもらえると思ったのに、と予想外の大事件への発展に当惑している様子でした。インターネット上では、概ね「予想外に多額の金額」という見られ方をしているようです。内容の真偽はさておき、弁護士観点から言えば、保釈金150万円は「相場」の金額であり、事業所に対する賠償金と言われる83万円もありうる金額と思われます。

 いまや世界中の人々の話題はコロナで持ちきりで、コロナをめぐる冗談も世界中で発言され続けています。「俺コロナ」の類は、最も思いつきやすい悪い冗談なのでしょう。

 とは言え、言われた側にとっては万が一でも店内でウイルスを感染させてしまい、その責任を負うことになってはたまらないので、95%冗談だと考えていても、冗談で済ますことはできません(英国では「新型コロナウイルスに感染している」などと主張する男から唾をかけられたり、目の前でせき込まれた駅員がウイルスに感染して死亡するという痛ましい事件も起きています。
英 女性駅員死亡 新型コロナ“感染者”の男に唾かけられる」)。

 それでは、冗談としての「俺コロナ」のうち一体どこからが有責であり、どこまでなら許してもらえるのであろうか。より重い刑事上の責任を中心に検討してみましょう。