「大切なお客さんが来るから、モデルとか用意できない?」
そんなリクエストに対し、私がバッチリ女の子を揃えると、ドンペリ20本を差し入れしてくれたりした。入場条件が極めて厳しいなか、私は個人的な人脈を使ってVVIP席への出入りを許可されていたのが本当のところである。
私たちは必ずルールを守り、場を乱さず遊びに徹していた。刺青などを見せることは絶対にしない。そういう気遣いは日頃からもっとも重視しており、私たちのことを見ても「反社会的勢力」とは誰も思わなかったはずだ。
このULTRA JAPANのアフターパーティは数ヵ所でおこなわれるが、その会場のひとつがフジテレビ本社の、あの球体部分だ。入場も厳格にチェックされ、限られた人たちしか入ることは許されないが、そこにも私は入場することができた。
少なくともある時期まで、私はパリピの仲間に囲まれ、どこにも遠慮することなく出入りできた。人脈を広げることによって、それまでの人生で少なかった「表の世界」の人々との交流も深めていた。私は本当に、遅れてきた「新しい人生」を楽しんでいたのである。
突然はじまった手のひら返し
しかし、このULTRA JAPANが、いわゆる「反社」「半グレ」への対応を厳格化するのにそう時間はかからなかった。
ULTRA JAPANが日本で初めて開催された2014年は、まだ反社、半グレへの対応はほぼなされていなかった。そのためか、VVIPエリアは不良たちが幅を利かせていた。
だが2回目の開催あたりから、反社、半グレのVVIPエリアへの入場が規制されはじめた。たとえば「刺青が入っている人間はNG」といった条件がつけられたり、予約の際に名刺を提出させ、その人物や会社の素性を調査するという対策が始まった。会社も、信用のある有名企業以外は受け付けられない、という話も聞こえてきた。
ULTRA JAPANでのオフィシャルHPで「ハッピを着ての入場をお断りする……」という規制も始めた。ハッピを着ているのは“パリピ”を売りにしていた私たちしかいない。私たちを名指しして閉め出していることに等しかった。
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「半グレと金塊」ではULTRA JAPANを巡る野口氏と大手レコード会社の確執、そして噂されていた芸能人人脈の真相、警察との癒着、そして犯罪小説をも凌駕するような金塊強奪事件の驚きの真相等が語られている。