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半蔵門線の“ナゾの終着駅”「南栗橋」には何がある? 『翔んで埼玉』どころか『翔んで茨城』?――2019年 BEST5

2020/05/21

genre : ライフ, 社会,

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南栗橋とは“平成”のニュータウンである

 元をたどると、栗橋という町は古くから奥州街道の宿場町にして利根川を渡る渡船場でもあったという。南栗橋駅はそれよりも南(あたりまえ)にあって、古い地図を見れば田畑ばかりが広がるエリア。そこに車両基地と駅ができたのが1986年で、以降地下鉄への直通列車の始発・終着駅となって発展が始まった。1989年には埼玉県済生会栗橋病院もできた。つまり南栗橋の正体は、車両基地と駅から育った“平成”のニュータウンなのであった。駅の近くには「平成橋」という小さな橋もあるから、本当に最近になって町づくりが始まって人が増えつつある町なのだ。

南栗橋は“平成”のニュータウンなのだった
新しく計画された街らしい真っ直ぐな道

茨城県から南栗橋駅を利用する人もいる?

 そんなことを感じながら、真新しい町と道を歩いて駅から東へと足を伸ばしてみる。すると見えてくるのは川と橋。釣り人がいたので話しかけてみると、「この川の向こうはもう茨城だからね」。南栗橋駅から10分ほど歩いて利根川の支流・権現堂川を渡れば茨城県に入るのだ。翔んで埼玉どころか翔んで茨城。茨城県側から南栗橋駅を利用する人もいるという。釣り人はまた言う。

「でも茨城ってよりは埼玉のほうがまだ良いんじゃないの。そういう意味じゃあ、南栗橋はギリギリだよね(笑)」

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 自虐ネタでお馴染みの埼玉も、どうやら茨城には負けたくない(というか負けていない)と思っているのか。そんな釣り人氏は茨城県側に住んでいるらしい。

 というわけで、都心から1時間超の埼玉県は南栗橋。まだまだ空き地や田畑も多く、そもそも駅の周りに飲食店のたぐいはほとんどないから、人が増えたと言っても発展途上。いくら乗換なしと言っても、わざわざ遠方から足を運ぶほどの何かがあるわけでもない。だからこそ静かだし、それでいて必ず座って通勤できるから、住む分には悪くないのかも。あ、もちろんホテルのような宿泊施設もないから、越谷あたりに帰る人が寝過ごして南栗橋で目覚めたらとてつもない悲劇なのでご注意を……。

利根川の支流・権現堂川を渡れば茨城県だ
東武日光線内を走る地下鉄半蔵門線の車両で帰路につく

写真=鼠入昌史

半蔵門線の“ナゾの終着駅”「南栗橋」には何がある? 『翔んで埼玉』どころか『翔んで茨城』?――2019年 BEST5

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